約 2,183,279 件
https://w.atwiki.jp/rpgzikkyousure/pages/11.html
RPG配信希望 実況者さんが参考になるように名前欄にゲーム名(機種)コメント欄にどんなゲームなのか書き込むとフラグが立ちます ググッたら一番最初に出てくるような書き方をしましょう←ここ重要 「この実況人にこのゲームをやってほしい」は論外です 2007/4~12 2007/03 2007/02 2007/01 2006/12 2006/11 メガテンノクタンマニアクス -- 名無しさん (2008-02-02 17 05 00) 神ゲーだから是非やってほしい -- オプーナ(Wii) (2008-02-20 14 39 50) WIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII -- DIO (2008-02-21 22 38 51) サガフロ -- 名無しさん (2009-02-12 16 05 05) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/215.html
Famille? ◆SERENA/7ps マリアベルが語りを終える。 先導するマリアベルが話してきた内容は、とても重いものだった。 ロザリーは、今日一日で何度となく驚いてきた。 ここに来て、ロザリーは自分の常識の数々をひっくり返される。 雷呪文を扱えるのは勇者だけと言う常識、魔王を打ち砕くのは勇者という常識。 それらは常識でも何でもなく、単なる先入観や偏見でしかなった。 しかし、それを認めたくない自分がいるのも確かだ。 昨日までの常識は間違っていたんですよ、と言われてはい分かりましたと言えるほど、度量が広い存在などそうはいない。 だが、どれだけ反論を考えても、マリアベルの言葉に対する有効な論は見当たらなかった。 だったら、ロザリーが勇者様と呼んでいたユーリルもまた、勇者を求める世界によって捧げられた生贄なのだろうか? そう考えてしまう。 勇者の旅には、ほんの少しだけ同行した思い出がある。 勇者とその仲間の間には笑顔が耐えることはなく、戦闘の際にも強い信頼と絆が見て取れた。 でも、だからと言って問題ないと言えるのだろうか? 終わりよければ全てよしという結果論で語れる問題ではないのだ。 もしもこの先遠い未来、世界を再び暗雲が覆っても、勇者がなりたくもないのに勇者になっても、綺麗な思い出さえ作れば問題ないのだろうか。 ロザリーは、俯きながらそのことをずっと考えていた。 ニノは女だ。 だから、あまり関係ない話だと思っていた。 英雄譚に目を輝かせるのは男の子であって、自分には興味のない話だと思っていた。 しかし、本当にそうなのだろうか。 英雄とは絵本に描かれるような遠い存在ではなく、もっと身近なものではないのだろうか。 アナスタシアという、生きたいという思いが強かったが為に英雄になってしまった女の子と、ニノに何か違いはあるのだろうか。 下級貴族ではあったが、アナスタシアがアガートラームに選ばれたのは生まれた血筋が原因ではない。 ニノとは何の変わりも無い、今日を楽しく過ごして、明日起きて何をするか楽しみにして寝る普通の女の子だ。 英雄になりたくなくてもなってしまったマリアベルの友達、英雄になろうとしていた人たち、英雄の名を背負った人たち。 そんな『英雄』に向き合っていったアシュレーやマリアベルの冒険は、ニノの想像を絶していた。 「すまぬな……そなたらを困らせるつもりはないのじゃ」 ただ、そうやって逝った友達がいたことと、『英雄』という言葉を勘違いして欲しくなかっただけだ。 『英雄』とは決して綺麗な響きだけを持つ言葉ではないこと、『英雄』を特別視してほしくないということを伝えたかった。 「すごいよ……」 ニノがそう、口に出した。 「あたしには、そんな答え一生かかっても出せないよ……」 「何故じゃ?」 「だって、あたし馬鹿だもん……」 ニノには学がない。 政治も分からぬ。 読み書きだってつい最近覚えたばかりだ。 だから、今マリアベルが語っていった人たちのように、『英雄』に対する答えを見つけることは到底できないと思った。 ファルガイアを救うのはたった一人の『英雄』などではなく、ファルガイアに生きる全ての生物の生きたいという想い。 だから、『英雄』なんかいらないと言ったアシュレー=ウィンチェスター。 『英雄』とは何かを為そうとする人の心に等しく存在するもの。 そして、『英雄』とは勇気を引き出すための意志の体現だと言ったブラッド=エヴァンス。 どれもとても重く、一朝一夕では見つからない答え。 みんな必死に考えて考えて、答えが見つからない現実に何度も苦悩して、その果てにやっと導き出した回答なのだろう。 そんなもの、落ちこぼれの自分には逆立ちしたって答えが見つかるはずがないと、ニノは思っていた。 だが、先を歩くマリアベルは少しムッとした様子で言い返した。 「ニノよ、無知であることを自覚するのはよい。 じゃが無知であることを免罪符にしようとするな。 わらわは学ぼうとする無知は嫌いではないが、学ぶ気のない無知は好かぬ」 無知であることを免罪符にして答えを求めることを放棄すること、それこそが無知の極致だ。 アシュレーたちはみんな、『英雄』とは何かという問いに対して、それぞれの答えを見つけ出した。 そう、『英雄』に決まった答えなどない。 数学のように確たる答えもない、禅問答のようなものだ。 「お主が誰かを守る強さが欲しいのなら常に強くあろうとし、どうすれば誰かを守れることができるかを常に考えるのじゃ」 それは『英雄』に対してだけの問題ではない。 マリアベルの『人間とは何か?』というノーブルレッド永遠の命題と同じようなものだ。 決まった答えも返しの定型句もないような問題に直面した時でも、常に答えを探すことを忘れてはならない。 求める限り、答えは逃げていく。 求めない限り、答えは得られない。 ならば、答えを追い続けて、いつの日か掴み取るのだ。 己の無知を知り、なお答えを求める者。 それはもはや無知ではない。 ニノはしばらく内容を理解できなかったが、自分の頭の中で噛み砕いて、マリアベルの言葉を理解していく。 「うん、分かった。 じゃああたし、まず何をすればいいの?」 マリアベルはその答えに満足しつつ、答えを返す。 「まずは、進むこと。 それが一番じゃな」 『英雄』に対する答えを見つけるのも、仲間の死を悲しむのも、オディオに怒るのも、全ては進まないと始まらない。 だから、今は神殿で雨宿りをすることを始める。 「案ずるなニノ、ロザリーよ。 もう夜は近い。 繰り返される夜は全て我がノーブルレッドのものじゃ。 誰が居ようと来ようと負けはせぬわ」 振り返り、自信満々に言うマリアベル。 先の見えない不安に対する、マリアベルなりの励ましだ。 マリアベルの言われた言葉をしっかり理解し、もう『英雄』に対して向き合うニノ。 対するロザリーは、生きてきた年月がニノより長い分、常識という壁が少し分厚い。 マリアベルの言葉に間違いは無いと思うが、すぐに考えを切り替えることはできなかった。 常識というのはいつもは役立つが、それが脅かされると途端に厚い壁となって立ちふさがる。 ニノの純粋さが、少しだけロザリーは羨ましかった。 湖の外周部分に沿って歩き、ようやく橋の付近まで来た。 後は橋を渡るだけだ。 誰もが半分安心しかかっていたその時―― 「助けて!!」 という声が聞こえてくる。 空模様は一層厳しさを増す。 雷が、そう遠くない場所に落ちた。 ◆ ◆ ◆ 行動方針は、村とその周辺を行ったり来たりで参加者を狩る。 探し人とのすれ違いを防ぐと同時に、知らない場所で戦うより多少土地勘のある場所で戦えるようになるからだ。 今は、再び村を離れて多少遠くまで出てきた。 生憎の空模様だというのに、先を行くジャファルはそんなことをまったく気にしてない。 当然かとシンシアは思う。 暗殺者にとっては、夜の闇は身を隠す絶好の隠れ蓑になる。 雨は足音や殺気も消してくれるから、夜の雨と暗殺者とは鬼に金棒の組み合わせ。 そこにジャファルが行くのはごく自然なことなのだろう。 シンシアも反対はしない。 言わば、これはジャファルのご機嫌取りのようなものだ。 さっき独断専行をした借りを帳消しにするという意味で、シンシアはジャファルの行く先に文句を言わずついていく。 いつか来る決別の時まで、お互いがお互いを利用しつくす。 そして、いつしかシンシアとジャファルは行動を共にする限り、必ずや戦わねばならない日が来る。 といっても、実力では圧倒的にジャファルが上だ。 ただの山育ちの娘と、一流の暗殺者のジャファル。 借り物の身体も決して弱くはないが、ジャファルとシンシアの間には埋めようのない戦闘経験の差があった。 しかし、シンシアも負けられはしない。 シンシアはシンシアにしかできないことをして、ジャファルの首を取ればいい。 例えば、シンシアは回復魔法を持っているのに対して、ジャファルは持ってない。 これは大きなアドバンテージだ。 言わば、戦闘で負傷した際のジャファルの生殺与奪の権利はシンシアのものだ。 まだまだ使えそうな怪我なら治してやり、もう使えそうになくなったら切り捨てればいい。 勇者の命を、こんな暗殺者に殺させてはならない。 勇者とは、決して絶やしてはならぬ灯火のようなもの。 世界に光をもたらすものが、こんなところで命を落としてはならないのだ。 その火を灯すために必要な負債や代償は、余すところなくシンシアが支払う。 シンシアは影。 光を際立たせる影。 綺麗事ばかりでは生きていけない世界で、正しき勇者に代わって悪を為す存在。 これは一人しか生き残れないバトルロワイアル。 未熟な勇者の卵のユーリルに、今はまだオディオのような巨悪は討つ力はない。 そう、シンシアの知るユーリルはまだまだ勇者としてヒヨッコ。 今は、シンシアがユーリルを守らねばならないのだ。 いずれ来る過酷な運命に旅立つユーリルのそばに、シンシアはいることはできない。 シンシアはせいぜいモシャスのような、多少珍しい呪文が唱えることができるくらい。 力不足なのだ。 だから、小さい頃からせめて、ユーリルには帰ってくる場所がここにあるんだと教えてあげるように務めた。 激しい戦いの連続で心が折れても、村で暮らした楽しい想い出が立ち上がる力となるように。 といっても、それは村の比較的年寄りの連中が言っていたことだ。 未来の勇者様の力になれるようとか、勇者だから大切に相手しろとか。 そんなの馬鹿らしいとシンシアは思う。 そんな年寄りに対して、いつもシンシアは言ってきた。 ユーリルはユーリルなの。 勇者様って名前じゃないわ、と。 そう言うと、大人たちはいつも苦笑していたのを思い出す。 ユーリルが勇者じゃなくても、シンシアはユーリルと仲良く暮らした。 なんて言ったって、同年代の子供がいないのだ。 仲良くならない方が難しい。 山奥の村では、みんなが家族なのだ。 家族。 それは絆。 家族。 決して裏切らない。 家族 血が繋がっていなくてもなれる。 人が少ないからこそ助け合い、血が繋がってなくても家族以上に絆が深かった。 楽しい想い出もたくさん作った。 虫を捕まえて、小川で水遊びをして、森の中でかくれんぼをした。 魔物の動きが活発になる前は、朝早くから夜遅くまで山の中を走り回った。 お城のある城下町なんかと違って、山奥の田舎村には何もない。 でも、何も無いけど、何も無いからこそ、いつも平和で村の笑顔が耐えることはなかった。 ユーリルはいつも口数が少なかった。 言葉少なく、そのことに不安を持つ大人もいた。 でも、誰よりもユーリルと長く暮らしたシンシアは知っている。 その数少ない言葉の端々から垣間見えたユーリルの優しさを。 きっと、ユーリルは勇者なんかより、もっといい職業があるんじゃないかなと思う。 ユーリルが勇者じゃなくて、このまま何も変わらないまま一生暮らせたらいいなと、何度考えたことか。 それに、きっと、恋してた。 でも、それを打ち明けるより前に魔物の軍団がついに村の居場所を突き止め、仮初めの平和は幕を閉じた。 シンシアの役目は決まっていた。 モシャスを唱え、勇者の身代わりとなること。 ユーリルの隠れた場所が見つからないことを祈りつつ、シンシアの命は絶たれた。 でも、何故かシンシアは二度目の生を与えられた。 それだけなら戸惑っていただろう。 何故よりにもよって私の命が?と。 しかし、ここにはあのユーリルの名前もあった。 ならば、シンシアのやることは決まっている。 今度もこの命を後の世の平和のため、ユーリルという家族であり世界の光でもある幼馴染を守るのだ。 そう、思っていた。 そう、思っていたのに。 そう、思って己の手を血に染めたのに。 新たな三人の目標を捕捉した時、ジャファルはついにシンシアに牙を剥く。 シンシアよりも先に三人のターゲットを見つけていたジャファルは、その内の一人を見たとき、ついに見つけたと確信した。 波紋一つ立たない水面のようだったジャファルの心が波打った。 何時も無表情、何時でも無感情のジャファルが唯一心乱れる存在、それがニノ。 決まった。 ニノを見つけた以上、ジャファルにシンシアのような女と手を組む理由はない。 あらかじめ決めていた作戦に従わず、抜け駆けした気質からもシンシアの危険性が伺える。 何より、どちらかが探し人を見つけるまでが手を組む期間だった。 ジャファルには運が味方し、シンシアにはしなかったのだろう。 振り向くと同時に、ジャファルはシンシアの心臓に刃を突き立てんとする。 シンシアの目には、前を歩くジャファルが音もなくフッと掻き消え、次の瞬間にはシンシアの腹にアサシンダガーが刺さっていたようにしか見えない。 心臓を避けたのは、シンシアもジャファルのことを逐一警戒していたため。 借り物の体の内臓が破壊されるのを、シンシアは名状しがたい激痛とともに感じた。 あわててジャファルを突き飛ばし、なんとか距離は離す。 ここに来て、シンシアもジャファルが同盟関係を解消して、襲ってきたのだと理解する。 突然ジャファルが心変わりしたか、あるいは見つけた三人の中に探し人がいたか、どっちも考えられる。 激しくシンシアは吐血する。 口元に手を当てても、なお零れるほどの出血だった。 来るべき時がついに来た。 そして、先手をとられてしまった。 回復呪文の効果が薄いここでは、一瞬の油断が致命傷になる。 シンシアはジャファルの追撃をかわす様にバギマの呪文を唱えると、見つけた三人の元へ地を蹴った。 単独でのジャファルの撃破は無理だ。 ならば、あの三人に助けを求めるしかない。 死ねない。 こんなところで死んでたまるか。 勇者を守るという責務があるのだ。 しかし、敵はあまりにもシンシアと実力差がありすぎる。 ミラクルシューズの恩恵はあるが、ジャファルがいつ背中に迫ってくるか分からない恐怖で、シンシアはみっともないくらいの大声で叫んだ。 「助けて!!」 ◆ ◆ ◆ 「ミネアさん!」 必死の形相で走ってくる女の顔に、ロザリーは見覚えがあった。 勇者の仲間の占い師の名前を呼ぶ。 その体からはおびただしいほどの血が見える。 マリアベルとニノが戦闘態勢に入る。 マリアベルが前に立ち、ニノは後ろへ。 誰かに襲われていることを三人とも感じ取る。 ミネアは後ろを向き、バギ系最高位の呪文を背後に放っていた。 「バギクロス!」 ロザリーのヴォルテックとは比較にならないほどの出力。 上空の雲に届くほどの竜巻を形成すると、竜巻はその行く先にあるすべてを切り刻み、吹き飛ばす。 木も草も砂も、削り取られ上空に舞う。 巨木がいくつか湖に落ち、水しぶきと大きな音を立てた。 しかし、敵は倒せてないようで、ミネアは再びこちらに走り寄ってくる。 マリアベルを先頭にして、三人がミネアのところへ駆ける。 その中で、ニノが一瞬だけその姿を見た。 木から木へと飛び移るその姿、気配を消して新たな遮蔽物へ身を隠すそのわずかな瞬間を、ニノは捉えた。 翻る闇のような黒衣、風になびく赤い髪、そして氷のように冷たい刃……それはニノの愛しき人、ジャファル。 ニノは襲っている相手が誰なのか認識した。 ニノが声を出す前に、再びジャファルは姿を消す。 ようやくジャファルを見つけたことに対するうれしさか、それともジャファルの今やってることに対する悲しさからか、ニノは泣きそうになった。 次に姿を現した時は、マリアベルたち三人全員がジャファルの姿を目撃した。 バギクロスをなんなく避けたジャファルはすでにシンシアに肉薄しており、右手に握られたアサシンダガ―をシンシアの背中に突き立てようとするところ。 「止めてーーーーーーーーーーーーっ!!」 悲痛な叫びをニノが漏らす。 ジャファルの顔がわずかに歪む。 だが、それで『黒い牙』最高の暗殺者に与えられる称号、『四牙』を持つ男が止まったりはしなかった。 ミネアの背中に、ジャファルはアサシンダガ―を刺した。 ミネアが、力なくその場に倒れた。 そして、同時に。 アナスタシアとユーリルの争いの場に乱入してしまい、緊急回避にテレポートを使ったアキラたちがジャファルとニノたちの間に飛んできた。 ◆ ◆ ◆ アキラのテレポートは、特に水のある場所に引き寄せられることが多い。 それはチビッコハウスのトイレだったり、お風呂場だったり……いつかに迷い込んだ不思議な迷宮も水路があった。 ならば神殿の泉……しかもアキラがアイシャを水葬したここに飛んでくるのは、極自然なことなのかもしれない。 飛んできたのはブラッド、ヘクトル、リン、イスラ、アキラ。 そして、アキラのテレポートに巻き込まれるようについてきた、ユーリルとアナスタシアの計7人。 「何が起こった……」 状況が分らないのはヘクトルとイスラとユーリルとアナスタシアとリン。 「アナスタシア・ルン・ヴァレリア……!?」 状況をいち早く理解しようとしているのはブラッド。 「ここは……アイシャの……ッ?」 そして、どこに飛んだかを把握したアキラ。 「ブラッド……お主一体どこから降ってき――アナスタシア……なのか……?」 突然の仲間とその集団の出現に驚き、そして数百年ぶりに友達に再会したマリアベル。 「勇者様!」 そして、ユーリルとの出会いに驚くロザリー。 誰もが驚き戸惑う中、ジャファルだけが己の目的を行動に移していた。 ミネア――本当はシンシアだが――にかろうじて息があるものの、もはやジャファルの目的にシンシアの殺害という項目はなくなった。 優先すべき事柄はただ一つ、ニノの保護。 ジャファルにも何が起きたのかは分らない。 突然7人もの人間が出現して、驚かないはずがない。 だが、分らなければ分らないでよかった。 それよりもニノの安否の確保が大事なのだから。 ニノ以外の人間など、ジャファルの興味は欠片もない。 あの7人の中に、ニノに対して敵意を向ける輩がいないとは限らない。 そして、7人も戸惑いの為動きを止めている。 ならば、好機は今しかない。 ミネアの身体から引き抜いたアサシンダガ―の血を拭うこともせず懐にしまい、ニノの元へ駆けだす。 それはニノとの間にいた7人、そしてニノの前にいたロザリーとマリアベルの障害物をすり抜け、あっという間に到着した。 ニノを肩に担ぎ、ジャファルは全速力でその場を離脱する。 「ニノッ!?」 「ジャファルっ! てめえ!」 追いかけようとするマリアベルより早く、リンを下ろしたヘクトルが駆け出しジャファルの後を追う。 リンも、拙い足取りでヘクトルの後ろに追走してた。 残されたブラッドが、同じく追いかけようとしていたマリアベルを制する。 「待て、マリアベル。 ヘクトルとリンはあの二人の知り合いだ。 任せてやれ」 「し、しかしのう……」 ニノが心配だ。 拉致されたということはニノに使い道があるということ。 そしてニノが言っていたジャファルの特徴とも一致する。 ニノの言葉が確かなら、ニノが殺される心配はまずないはずだが。 「それよりも、こちらの収集をつける方が先だ」 「ううう、ううううぅうううぅうう!」 獣のような呻き声を上げ、天空の剣を振り上げるユーリルを羽交い絞めにすることでなんとか抑え込んでいるブラッド。 そのユーリルの目には、アナスタシアしか映っていない。 確かにこの敵意を宿した男をなんとか抑え、何故ブラッドたちがこうして来たのか説明してもらわなければならない。 それに、アナスタシアのことが気になる。 「アナスタシア……」 あの時、今よりもう少しマリアベルが若かった当時、最後の別れをしたときと同じ格好をしているアナスタシア。 夢でも幻でもなかった。 同姓同名の人物ではと、何度も考え直したアナスタシアの姿がそこにあった。 この数百年、別れてから今までマリアベルが何をしていたか聞いてもらいたかったし、マリアベルも聞かせて欲しかった。 胸が熱くなるのをマリアベルは感じる。 何を言おうか、何から言おうか。 いくつもの気持ちが重なりあって、すぐに言葉を紡ぐことはできない。 しかし、何故かアナスタシアは見つめるマリアベルから、そっと視線をそらした。 「アナスタシア……!」 アナスタシアに会いたくなかったのに、イスラはまた出会ってしまった。 会いたくないが故に、会いそうにないヘクトルに同行したのに、何故また出会ってしまうのか。 アナスタシアは、イスラなど眼中にないようであった。 ブラッドが抑えている錯乱気味の男を見るばかりで、目もくれない。 そのことが、少しだけイスラを苛立たせた。 「勇者様……」 呆然と、ロザリーは呟く。 重装甲の鎧を纏った男がニノを追うとのことだから、ロザリーもこちらにとどまった。 うめき声を上げながら、ブラッドの腕の中から抜け出そうとする勇者ユーリル。 かつてロザリーが見た、勇者の誇りに満ちたあの面影がどこにも見当たらない。 涙と鼻水と、あらゆる体液でグチャグチャになったユーリルの顔は泣いている子供のようだった。 それに、どうしてだろうか。 今のユーリルにはかつてのピサロに通じるものがある。 あの顔は、憎しみに囚われているように見える。 アナスタシアと、マリアベルが呼んだ女に対して、一心不乱にユーリルは剣を振る。 その人に何かされたのだろうか? しかし、何かされたとしても、何がユーリルをここまで駆り立てるのだろう。 そのことが、ロザリーは気になった。 「何なんだよ……これはッ!」 ミネアの姿を取った襲撃者が死にそうなのを、アキラは見た。 恨みつらみはある。 しかし、死にそうな姿を見ると、何とも言えない気分になる。 「ふざけるんじゃねぇよ……こんな死に方……お前だって望んじゃいなかっただろうがッ!」 仇を取れなかったことに対する悔しさと、そもそもの元凶であるオディオへの怒りと、犬死にした女へのなんとも言えない感情。 それらがない交ぜになってアキラを襲っていた。 「ユー……リル?」 ハッと、ユーリルの動きが止まる。 ユーリルに聞き覚えのある声が耳に届いたから。 蚊の泣くようなか細い声だが、ユーリルは確かに聞いた。 声のする方向を向くと、さっきまでミネアの姿をしていたものが、いつの間にか別の人間の体に変わっている。 それはユーリルが勇者となるきっかけを作った襲撃事件で、勇者の身代わりとなった女の子。 それは幼い頃から山の中を駆け回り、大切な時間を過ごした幼なじみ。 シンシア。 「シンシアぁ!」 勇者になる前のユーリルを知っている、唯一の人間。 その人が、今瀕死の状態でうつ伏せに倒れていた。 アナスタシアのことも忘れ、ユーリルはシンシアに触れようとブラッドの腕の中で暴れた。 「離せ、離してくれ! シンシアが、シンシアが……シンシアがっ!」 先ほどまでとは打って変わって理性的な響きを持つ声に、知り合いらしいと推測したブラッドは手を離してしまった。 知人の今わの際の言葉を聞く権利を蹂躙するほど、ブラッドは薄情ではない。 ユーリルは急ぎシンシアに近寄って体を起こし、べホマの呪文をかけるが、完全に手遅れなことを悟る。 「シンシア! シンシア! しっかり!」 どうして今までシンシアを放っておいたのか、ユーリルは自責の念に駆られる。 昔と違って、今ならユーリルにはシンシアを守れる強さがあったのに。 今度は、自分が守る番だったのに。 またもユーリルは間に合わなかった。 シンシアはユーリルの昔を知っている唯一の人物だ。 そう、シンシアは山で過ごした家族なのだ。 勇者でない自分を暖かく迎え入れてくれるはずなのだ。 家族。 それは絆。 家族。 決して裏切らない。 家族 血が繋がっていなくてもなれる。 その、家族の命が今また失われようとしている。 ユーリルは、力いっぱいシンシアを抱きしめ、今にも消えかかっている命を繋ぎ止めようとしていた。 「ユーリル……」 最後の力を振り絞り、ユーリルの手を掴む。 それは、シンシアの知っている頃より、少し逞しくて太い気がした。 ようやく会えた。 泣きはらしているユーリルの優しさを、シンシアは嬉しいと思った。 そう、ユーリルはこんなにも優しい子なのだ。 この光を守るために、シンシアは手を汚した。 世界の希望を守るために、神様の教えに背く大罪を犯した。 もうすぐ、シンシアは神の下へ召される。 きっとシンシアは天国にはいけず、地獄の業火で何百年何千年と焼かれるだろう。 途方もなく痛いんだろう。 今感じている痛みの万倍の苦しさがそこにあるんだろう。 だけど、それでも構わなかった。 ただ、ユーリルの笑顔があれば、それだけで笑えて逝けた。 それだけで、地獄の責め苦に耐えられる気がした。 だから、最期に―― 「笑って……ユーリル」 そう言った。 悲しいときに、笑えと突然言われてもユーリルは困る。 シンシアだけが、ユーリルの反応がおかしくて笑みを浮かべた。 「頑張って……」 もう、声を出す力もなくなってきた。 瞼が、すごく重い。 だから、これが最期の言葉。 「皆を救って……。 あなたは……勇者なんだから……」 ユーリルという光に賭けて、シンシアは手を汚した。 ユーリルの笑顔が見られるなら、どんな罰でも受ける気だった。 なのに。 たどり着いた先に、光はなかった。 あるのは、黒よりも黒い闇だった。 シンシアが最期に見たのは、どす黒い表情をしたユーリルの表情。 そして、シンシアの顔に振り下ろされるユーリルの拳とグロテスクな音。 ぐちゃり。 ―――――え? 【シンシア@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち 死亡】 【残り25人】 雨が。 最初の一粒がユーリルの頬に落ちた。 時系列順で読む BACK△098-1 Fate or Destiny or Fortune?Next▼098-3 Throwing into the banquet 投下順で読む BACK△098-1 Fate or Destiny or Fortune?Next▼098-3 Throwing into the banquet 098-1 Fate or Destiny or Fortune? アキラ 098-3 Throwing into the banquet リン ジャファル シンシア ユーリル ちょこ アナスタシア ヘクトル ブラッド イスラ カエル 魔王 ニノ マリアベル ロザリー ピサロ ▲
https://w.atwiki.jp/rpgzikkyousure/pages/140.html
RPGスレになる 4月中旬 【DQ】RPG実況スレ【マザー2】 http //ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1145158685/ 451 名前:16 :2006/04/16(日) 22 15 21.39 ID 5CUF/Bda0 ドリル装備まだー? この[[RPG]]実況スレが認知されるといいね それには[[実況人]]が増えてどの時間にも実況があるのが理想なんだよなー てなわけで実況人募集中 初期の実況人は2人と少なかったもののレスは多く付いていた。 活気に惹かれてか、スレタイ変更、テンプレ整備の効果か、 やがて他の実況者さんも少しずつ加わり、スレ番号を重ねていった。 5スレ目は「RPG実況5」というシンプルなタイトルになり、 以後これが踏襲される。 ROMが多いRPGスレ 当時からROMについては話題になっている。 【祝!】RPG実況スレ【1000】 http //ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1145207178 271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 20 54 08.20 ID wQZeZhLD0 ここはロムってる人が多いのか、人がいないのか・・・(^ω^;) 272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 20 55 11.42 ID XaZa/f+V0 ROMが多いのかと・・・ 273 名前:16 :2006/04/17(月) 20 55 18.55 ID eu9bxewo0 271 接続は15人いるんだけどねwwみんなロム(´・ω・`) 276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 20 58 36.25 ID sSqf7itq0 273 いや、見てるんだが・・・ボスとかなんかないと書くことねえwww 277 名前:16 :2006/04/17(月) 21 00 05.98 ID eu9bxewo0 276 いやいや無理して書き込むこたぁねぇよww みんなでDQを楽しめればいいのです(`・ω・´)
https://w.atwiki.jp/kingmaker/pages/51.html
キャラクターシート http //cgi.10yearsafter.info/dddbpf/OUTPUT.php?ID=40
https://w.atwiki.jp/aousagi/pages/561.html
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/338.html
ある『暗殺者』の終わり、そして、ある『勇者』の始まり ◆jtfCe9.SeY 淡くて、白い、儚い光が広がっていく。 それは、あたしの左手の薬指にはまっている指輪から放たれていた。 必死に縋った先に、あった指輪。 はめて、強く願った、ジャファルを救う力が欲しいと。 そしたら、途端に光って、その瞬間、あたしの力も満ちてきたのだ。 だから、必死の思いで、私は何度も、何度も、呪文を唱えて。 そして。 「…………ニノ……?」 あたしは、愛してる人を、救えたんだ。 ジャファル、ジャファル、ジャファル! 傷一つ無い、大好きな人が、あたしを見つめている。 あぁ、あぁ……ああ。 良かった……良かった……本当に……良かったっ 「生きてる……生きているよぉ……ジャファルが……生きている」 大好きな、人が、生きていた。 あたしの傍で、生きている。 もう、それだけで、よくて。 「そんなのどうでもいい! なんでだ……なんで俺を……ニノ……ニノの傷が……ニノが死んでしまう」 大好きな人の顔が歪んでいた。 ジャファルを救う為に。 あたしはもてる限りの力を費やした。 自分の傷を回復できないぐらいに。 だから、あたしは、ここで死ぬのだろう。 「御免ね……あたしから、一緒に居たいと願ったのに……あたしだけ、先に逝っちゃうよ」 「なんでだ、俺に、そんな価値なんて、無い! ニノに救われて、ニノの命を犠牲にしてまで、生きる価値なんて」 「あるよ、ジャファル」 ジャファルは勘違いしている。 しかも、とても簡単なぐらいの答えなのに。 だって 「貴方は、あたしにとって『最も価値のある』大切な人。救いたい、大好きな人なんだもん」 「……あぁ…………」 大好きな人。 愛してる人。 ジャファル。 何も、感情を見せない彼だったけど、そんな、彼が 「……嫌だ、嫌だ」 少年のように、泣いていた。 大好きな人が、死ぬのが嫌で。 愛してる人が、死ぬのが哀しくて。 涙を、流していた。 「俺はニノは、生きて欲しくて……だから……だから……」 「ううん、もういいの、ありがとう」 「いいわけが……っ!?」 それでも、まだ言葉を紡ごうとしていた大好きな人の口を。 あたしは、思いっきり口で塞いでいた。 想いを、形にするように。 長い間、そうしていて。 やがて、名残惜しかったけど、ゆっくりと離す。 多分、残された時間は、少ないから。 だから、残された、時間で。 ジャファルが、生きていけるように、あたしの想いを、言葉を口にしよう。 「ねぇ、ジャファル……ジャファルは、私を救ってくれたね」 「結局救えない……」 「ううん、救ってくれたよ」 そう、自分の命を懸けて。 死にそうな私を全力で救ってくれた。 思い浮かぶのは、あの雷の勇者。 あの人は、勇者だった。 でもね、あたし、思うんだ。 あたしの大好きな人。 あたしを、救おうとして、自分の命すら捨てようとする、人。 あたしが、苦しい時、あたしを救ってくれた、人。 愛してる人。 それが、ジャファル。 だからあたしにとって、貴方は 「救いたい大切な人を、大好きな人を、全力で救ってくれた、ジャファル、貴方はね」 ただひとりの。 「あたしの『勇者』だよ」 あたしにとっての勇者様。 あたしはね、ずっと 「今の今まで、あたしを救って、救い続けてくれたジャファルは、きっと『勇者』なんだよ」 貴方に『救われ続けていた』 「だからね、今度はあたし以外も、救って欲しい」 「違う! 俺が救いたいのは、お前だけだ! ニノだけなんだよ……」 「ありがとう、でも、聞いて」 これは、祝福なのかな? これは、呪詛なのかな? これは、あたしの愛なのかな? これは、独りよがりをおしつけてるだけなのかな? 「きっと、また哀しい、戦争が起きる。あたしやジャファルみたいな、両親を失った子が沢山出来てしまう」 でも、それでも。 あたしは、言葉をつむぎ続ける。 「それだけじゃない、闇の中でもがき続ける人が、また沢山出来るかもしれない」 あたし達や、あたし達の家族のような人たちが。 きっと、出来てしまうかもしれない。 だから、そういう子達を救う、勇者になってほしい。 「だから、ジャファル……貴方に、そういう人たちを、救って欲しいんだ」 「……俺に、出来る訳が無い……そういうのは……オスティア侯の役目だ」 「ううん、闇も知って、人の温もりも知っている貴方しか出来ない事だよ、だって」 ねえ、ジャファル。 あたし達は、闇に住んでいたけど 「闇にしか生きてなかった、あたし達が、愛し合えた。それが、きっと、『希望』になる」 「希望……?」 「当たり前のように、人に恋して、愛して、生きていく事。それが誰にも出来る事を、証明し続けて」 あたし達の出逢いはきっと無駄にじゃない。 あたし達の愛は、きっと無駄にならない。 「あたし達のような別れをこれ以上作らない為にも、貴方が、そんな弱い人達の、『勇者』になって」 あたしの大好きな人。 あたしの愛してる人。 「あたしの、『勇者』」 ジャファル。あたしはずっと好きだから。 ジャファル。あたしはずっと愛してるから。 「あたしは、貴方が犯していた罪を、許せない。だから、この願いは祝福であり、呪いだよ」 ジャファルの罪はきっと重い。 許されるものじゃない。 だから、ジャファルを勇者として誰も認めないだろう。 でも、あたしは、それでも、勇者だと思う。 あたしの『全て』を『救ってくれた』から。 「…………だから、頑張って生きてね……」 「……ニノ!?」 そして、身体から、力が抜けていく。 もう、終わりだった。 だからね、ジャファル。 「ジャファルは、幸せに、なれると、信じてるよ」 「何故だ……」 それは、あの雨の日の別れと一緒で。 ジャファルの涙が見える。 あたしの身体に縋りながら、あたしを引き止めるように。 そんなジャファルを想いながら、返事を返す 「あたしが……幸せだったから」 ジャファルと過ごした時間。 ジャファルが傍に居た時間。 こんなちっぽけだった自分が、こんなにも、幸せになれたんだ 「あたしすらも幸せできる人だから……ジャファルが他の人を救うのは簡単で、その中でジャファルは幸せになれるよ」 そんな簡単にいかないと思う。 でも、そう思いたい。 でも、そう願いたい。 だって、あたしの大好きな人なんだから。 「ジャファル、ありがとう。あたしに愛をくれてありがとう。温もりをありがとう」 感謝しても、感謝しきれないだろう。 一人で生きたあたしに、愛をくれたのだから。 愛を教えてくれた、ジャファルには生きてほしい。そう思うから。 そして、はめていた指輪をジャファルの指に、はめる。 「大好き、愛してる」 それしか、言葉が出なかった。 だから、唇を重ねた。 それで、充分だった。 ああ、あたし、幸せだったなぁ。 走馬灯のように、色んな人の顔が浮かんで。 「ニノ……大好きだ、愛している」 大好きな、人の言葉が聞こえた。 あたしは、笑った。笑えた気がした。 そして、闇が、訪れた。 でも、その闇が、おもいのほか温かい事を。 あたしは、愛してる人から教えて貰った気がしたから。 「ねぇ……本当に、幸せだったよ、ジャファル」 ありがとう。 そして 「誰よりも、誰よりも、この世界で、貴方を愛しているよ」 だから、頑張ってね。 ずっと、見守ってるから。 「ジャファル……ほんとう、だいすき、あいしてる―――えへへ、ずっと傍にいるからね」 【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣 死亡】 【残り13人】 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「ちっ……まずは、ヘクトルを討つぞっ! 旦那っ!」 「解かった」 「くっ……」 淡くて儚い優しい光が満ちる中、セッツァーは冷静に判断を下す。 ヘクトルおろか、ピサロでさえもあの光に、見惚れていた。 それほどまでに、温かな光だったのだ。 だが、ずっとそうしている訳にもいかないのだ。 今、明らかなイレギュラーが発生している以上、状況そのものは張り詰めている。 故に、セッツァーはまず確実に、ヘクトルを殺す事を選ぶ。 まず、これだけは先のことを考えても、やらなければならないのだ。 そして、そのままピサロの刃とセッツァーの槍が、ヘクトルを貫こうとした、その時 「……………………!」 疾風の如く、飛び込んでくる一つの影。 次第に収まってきている淡い光を纏いながら。 「……ジャファル!」 左手に逆手に持った鋭い和刀で、槍ごとセッツァーを吹き飛ばし。 「……それが答えかっ!」 右手に持って、薄く、されど絶大な切れ味を持つ西洋剣で、ピサロを吹き飛ばした人物。 「ジャファル……お前生きて……? 「……ニノの為にも……死んでもらっては困るんだ、オスティア侯」 左の薬指に、約束の、愛の指輪をはめて。 暗殺者だった男―――ジャファルは世界最後の日に、立っていた。 「その剣は……あの店で手に入れたものか!」 吹き飛ばされながら、ピサロはジャファルに向かって、叫ぶ。 ジャファルが右手に持つ、西洋剣。 それは、ある魔石を削って、出来た神剣。 絶大の薄さと軽さを、誇りながらも圧倒的な破壊力をもたらす魔剣。 所有者の力を高めて、所有者の力量以上を引き出す、神装。 それは、神々の黄昏を名に冠した、剣。 そう、ジャファルが持つのは、最強の剣、ラグナロク。 「今は、一撃で仕留める事に、拘らない……全力でいくぞ」 ジャファルは暗殺の為に、ナイフを使用し、それを好んでいる。 しかしながら、別に剣が扱えないわけではない。 むしろ、戦いが長引く戦場では、剣を振るう機会は多くあった。 どんな状況にも、対応できるように育てられてきた。 だからこそ、今、ジャファルが振るうべきは、二振りの剣。 ジャファルが殺した少女の愛刀、マーニ・カティ。 神々の黄昏を冠する神剣、ラグナロク。 二つとも驚くぐらいに、軽い。 これならば、行動が制限される事は無い。 瞬殺性を捨て、継戦性と破壊力を手に入れた、ジャファルのスタイル。 二振りの剣を持って、今、目の前の仇名す敵を、討つ。 「ニノは死んだ、もう居ない。失った命は二度と戻らない」 反芻するように、言葉を紡ぐ。 ああ、そうだ、死んだ命は戻らない。 戻ったとしてもモルフのような抜け殻だ。 「けど、ニノは望んだんだ、俺に生きるようにって。俺達な哀しい恋をする人がもう増えないようにして欲しいって」 だけど、ニノは望んだ。 ジャファルに生きてほしいと。 だから、ジャファルは此処にいる。 「闇の中にもがき続ける人を、救う『希望』になれって言ったんだ」 闇の中で、もがき続ける人達の希望になれと。 大好きな人が言ったんだ。 「俺のした事は、罪は、赦されない。 何れ罰を受ける事になるだろう……だが、まだそれは先だ。先にならなきゃならない」 ジャファルがニノの為に殺した事は赦されない。 何れは罰は受けるが、今はまだ。 「でも、今はそんな事どうでもいい。罪とか贖罪とか、罰とか信念とか、遺志とか、闇とか、光とか、本当に、もう全部どうでもいい!」 けど、そんな事、今は、もう全部どうでもいい。 今は、ただ、ただ。 「幸せだ、『救われた』といってくれた、ニノの為に。大好きな、愛しているニノの為に!」 ただ、ただ、『愛』の為に。 「ニノが言ってくれたんだ」 きっと他の人は、ジャファルを『それ』だと認めないだろう。 ジャファルは相応しくないといい、受け入れないだろう。 けど、それでいい。 だって、それでも、大好きな、愛してる人だけは、彼を認め、こう言ってくれるだろうから。 「だから、俺はなってやる」 ――――世界最期の日にある『暗殺者』が死んだ。 ――――だが、或いは、それはこうとも言えるのかもしれない。 「ニノの為に、ニノが望む『勇者』に……」 小さな、愛の指輪が、また光ったような気がして。 ジャファルは、強く宣言する。 「俺がー――――『勇者』になってやる!」 ――――そして、世界最期の日に、ある『勇者』が生まれたのだった。 RPGキャラバトルロワイアル。 第138話。 「ある『暗殺者』の終わり、そして、ある『勇者』の始まり」 【C-7とD-7の境界(C-7側)二日目 朝】 【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態] 健康 [装備] マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、ラグナロク@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ 導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣 [道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6 影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、、基本支給品一式×1 [思考] 基本 ニノの為に『勇者』になる。 1:ヘクトルと共に、セッツァー、ピサロを倒す。 [備考] ※ニノ支援A時点から参戦 ※セッツァーと情報交換をしました ※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。 【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】 [状態]:好調、魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り [装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2 [道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪 天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3 小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@??? ウィンチェスターの心臓@RPGロワ [思考] 基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る 1:ジャファルを倒す 2:魔王、ピサロと連携し、ヘクトル・ゴゴを倒す 3:C7制圧後は南下し、残る参加者を倒す 4:ゴゴに警戒。 5:手段を問わず、参加者を減らしたい ※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です ※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。 ※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。 【ピサロ@ドラゴンクエストIV】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、心を落ち着かせたため魔力微回復、ミナデインの光に激しい怒り ニノへの感謝 ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません) [装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2 [道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実 点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、 バヨネット 天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ メイメイさんの支給品(仮名)×1 [思考] 基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる 1:ジャファル達を打倒。 2:セッツァー・魔王と一時的に協力し、ヘクトル・ゴゴを撃破しつつ南へ進撃する 3:可能であれば、マリアベルとニノも蘇らせる [参戦時期]:5章最終決戦直後 [備考]:確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。 ヴォルテック、クイック、ゼーバー(ニノ所持)、ハイ・ヴォルテック(ニノ所持)。 ※バヨネット(パラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます) 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】 メイメイさんのルーレットダーツ3等賞。メイメイさんが見つくろった『ピサロにとって役に立つ物』。 あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがピサロが役に立つと思う物とは限らない。 【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中) 左手首に傷 左目消失 [装備]:アルマーズ@FE烈火の剣 [道具]:ビー玉@サモンナイト3、 基本支給品一式×4 [思考] 基本:オディオを絶対ぶっ倒して、オスティアに戻り弱さや脆さを抱えた人間も安心して過ごせる国にする 1:ジャファルと共に、セッツァーとピサロを倒す。 2:つるっぱげ、ダブル銀髪を必ず倒す。 3:ゴゴとちょこから話を聞きたい。 4:アナスタシアとセッツァーを警戒。 [備考]: ※フロリーナとは恋仲です。 ※セッツァーを黒と断定しました。 時系列順で読む BACK△138-1 ある『暗殺者』の終わりNext▼139-1 私がわたしを歩む時-I m not saint-(前編) 投下順で読む BACK△138-1 ある『暗殺者』の終わりNext▼139-1 私がわたしを歩む時-I m not saint-(前編) 136-1 ある『暗殺者』の終わり ニノ GAME OVER ヘクトル 139-1 私がわたしを歩む時-I m not saint-(前編) セッツァー ピサロ ジャファル ▲
https://w.atwiki.jp/gods/pages/84287.html
アナスタシオス 新ローマ・コンスタンティノープルの大主教、全地総主教の一。 別名: アナスタシイ
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/334.html
世界最期の陽(後編) ◆wqJoVoH16Y ピサロが放とうとしたイオナズンにニノがメラミを当てる。本来ただの炎であるはずのメラミが、爆発した。 その現象を見て、ピサロの表情から余裕が消える。たった何合かの打ち合いで、ニノはイオの要諦を掴み始めているのだ。 経験とは、相手が自分よりも格上であればあるほど得られるものだ。 魔族の王ピサロと“戯れた”ことで、皮肉にもそれは図らずもニノにとって何物にも変えがたい『授業』となっていたのだ。 だが、ピサロは今の拮抗を崩そうとはしなかった。それよりも、真っ向から向けられる想いに耳を傾けていたかった。 それは記憶だった。ニノがロザリーに出会い、マリアベルに出会い、再びジャファルとヘクトルに出会った想い出だった。 ヘマもした。落ち込みもした。怒られもした。でも、楽しかった。 殺し合いの中で“場違いすぎる”だろうが、それでも偽れない楽しい想い出だった。 ジャファルとあの雨の中で出会うまで、ニノがニノでいられたのは、きっとその想い出があったからだ。 想い出に、ニノは救われた。辛いときにも思い出せる想い出がある限り、人はまだ前を向ける。諦めずにいられるのだ。 「貴方が何のために戦ってるかなんて、今更聞かない。けどそれは、絶対にロザリーさんが望んでいることじゃない!! それでも、まだ分からないっていうのなら―――――――デュアルキャスト<ゼーハー×ゼーハー>」 両手のゼーハーを、自分の胸の中で一気に限界へと導く。まだ未完もいいところの隠し技だったが、躊躇は無かった。 ピサロに必要なのは、言葉ではなく『想い出』だ。彼が案じてきたものが、どれだけ見当違いだったかを伝えることだ。 だから、ニノは伝える。想い出を分かち合うために。今のロザリーの想い出だけじゃ足りないというのなら、この想い出を知れ。 ヘクトル達といたときじゃない、あたしが『この島で歩んできた想い出』の、総決算を! 「あたしが、ロザリーの代わりに、目を覚まさせてやるんだからッ――――――アカシックリライターッッ!!!!」 極小範囲とはいえ、原初の遺伝子すら書き換えかねないほどの『無』の力が、魔王に向かって放出される。 直撃ならばピサロとて無事では済まない一撃。しかも、無の力となると魔封剣で凌げる保証が無い。 「……バイキルト。『装填・イオナズン』」 本来ならば回避するべき一撃を前にピサロは足幅を大きく取り、自らに攻撃力倍加を、砲剣に爆裂の属性を付与した。 力には力。全てを真っ向から受け止めると決めた、魔族の王の構えだった。 「爆ぜろ――――まじん斬りッ!!」 ピサロの視界が爆震する。無が破裂するという矛盾が、現象となって世界を揺らした。 力の霧散のなか、ピサロは剣の手応えを感じた。砲身は壊れてはいない。これで―――― 「今のは、マリアベルとの想い出。あたしは馬鹿だったから難しいことは分からなかったから、 ロザリーさんも、難しいことはマリアベルに相談してたんだよ」 突如響くニノの声。ピサロはその声の方を向く。だが、“そこには誰もいなかった”。 「『パープルミスト』。これも、あたしの想い出。憎しみは消えない。でも、消えなくても、抱えて、前を向かなきゃいけないんだよ」 本当の声が、ピサロの背後から聞こえる。マント越しに僅かに伝わる熱は、それが最上級の業火であることを教えていた。 「だから、受け取って。これが、あたしとロザリーとの想い出の、最後。魔法3倍段<メラ×メラ×メラ>――――――――」 導きの指輪が赤く輝き、ニノとピサロの狭間で、第二の太陽が生まれた。 それは、マリアベルの世界にも無い力。ニノだけが、ニノだから得られた、三重魔法。 ロザリーが開いたメラの扉の先に、ニノは終ぞ至った。 「『必殺』のッッ―――――――メラ、ゾーマァァァァァッッッ!!!!」 荒涼たる大地と、雨上がり澄み渡る青い空。 その大地の下で炸裂したその一撃を、誰もが見た。 ジャファルも、ヘクトルも、セッツァーも、ゴゴも、魔王も僅かに戦いを止めた。 見くびっていたとはいえ、手を抜いていたとはいえ、あのピサロが、一撃貰った。 誰もが予想し得ない番狂わせが、そこにあった。 だが、ピサロは倒れなかった。そのマントを消し炭となくしながらも、二本の足でしっかりと大地に立っていた。 いつまでも力強いその背中を見て、ぜえぜえと息を切らせながらニノは、力なく笑った。 「やっぱ、無理か……はは、やっぱ、あたしじゃ、誰も救えないかぁ……」 ゴメン、とニノは想い出の中の人達に謝る。あたしじゃ、どうがんばっても、無理なものは無理だったよ。 「何故。誰も救えぬという」 ニノが寄り掛かった背中から、声が響いた。小さく、しかしニノにはっきりと聞こえる声で。 「え、だって、あたし……」 「一ツだけ、教えて欲しい。ロザリーはお前達と共にいたとき、笑っていたか?」 ダメージはあるはずだ。だが、それでもピサロの声に淀みは無かった。 ニノはそのとき、言われるがまま問われるがまま、うんと頷いた。 あれほどまでに張り詰めていた敵意が、霧散している。間近でも感じるほどにピサロから戦意が消失していた。 「そうか。笑えていたのか……ならば、お前は救っている」 え、という吃音さえ、ニノの咽喉につっかえた。 「お前の言葉には、紛うこと無きロザリーがいた。だからこそ、分かるのだ。お前達と共にいて笑うロザリーが。 ならばお前は救っている。お前がロザリーを救ったように――――“ロザリーもまたお前に救われていた”」 それはピサロにしか断言できないことだった。ニノの言葉が真であり、ピサロの中に息づくロザリーが真であるからこそ断言できた。 この島に投げ出されたロザリーは、いつ果ててもおかしく無かっただろう。外敵に襲われるよりもそうだが、 なにより、優しすぎるが故に命が潰えているという事実に心を痛め、苦しみ続けたかもしれない。ピサロが、ロザリーが居るという事実に気付かない間に。 だが、そうはならなかった。彼女はずっとピサロの知る優しい彼女のままだった。 それはきっと、自分よりも幼くそして傷つきやすい少女に、優しさを向けられたからだろう。 その優しさがニノを救えたからこそ、彼女もまたその優しさを疑うことなく前を向くことができたのだ。 「でも、あたしは……」 ニノの中の一番重たい扉が軋みを上げる。それは、何処か遠くの国の言葉にも聞こえた。 だからそれは、きっと自分には無縁の言葉だと思っていたのだ。足手まといの、役立たずの、クズのあたしには。 くしゃ、と翠の髪が擦れる音がし、ニノの頭に微かな重みが乗った。ピサロの手のひらが、ニノの頭を不器用に撫でる。 「ニノと言ったな。他の人間がお前のことをどう思っているのかなど知らぬ。 だが、少なくとも、私にとってはお前は意味があった―――――ありがとう」 ニノの頬に涙が流れた。それは、きっと欲してやまなかった言葉だった。 そして、その手のひらから伝わる感情がそれが嘘ではないと教えてくれる。 乗せられた手のひらから腕をとおり、見上げてその表情を見た。僅かな笑みも無い無表情だが、生真面目な誠意がある。 同情でもない、慰めでもない。腹に突き刺さる真っ直ぐな刃。 今まで出会ったことの無い人から、確かに自分の行いだけからのみ生じた敬意、そして感謝。 ――――ニノちゃんは落ちこぼれじゃないの。 落ちこぼれなんて言って、自分の限界を決め付けたりしないで。 ニノちゃんはいつも頑張ってる、笑顔の素敵な、かわいい女の子だって知っているから。 「……う、うん。どぅ…………いたぢ、まして……ッ」 初めての返事は、嗚咽でまみれて実に不恰好になってしまった。 伝わった。伝わるのだ。例え雨の中、夢の中で届かなくとも、この澄み渡る青空の下に届かない祈りなど無いのだ。 だから、きっと、ジャファルとも分かり合える、合えるんだよ。 「何をやっている、ピサロォォッォォオォォォォォ!!!!!!!!」 だから、最初、最後にいつ聞いたかも忘れたジャファルの叫び声にびっくりした。 そして、それが何のことを言っているのかを、ニノは見上げたその瞳を下に降ろして漸く理解した。 “あたしのお腹に、刃が突き刺さっている”。 「『ヒールフォース』――――最後に覚えておくといい。これが、ベホマだ」 ニノには何も理解できなかった。痛みが無くて、刺さっている刃とそこから流れる血液を見ていないと刺さっていることさえ忘れてしまいそうになる。 最後、最後って“なに”? そして、もう一度ピサロの表情を見る。そこには、先ほどと変わらない表情。感謝と、敬意と、誠実だけ。 騙された? 僅かな思考が過ぎるが、実体の伴わない思考は即座に血流と流れる。突き刺さる刃に、嘘などかけらも無かった。 感謝と、敬意と、誠実な気持ちだけで、彼の刃は人を殺す。 「なん、ニノ……なんで……ッ!!」 ニノ達とほどなく離れた戦場でその光景を見たヘクトルは、その光景を信じられなかった。 ピサロの刃が、ニノの腹に突き刺さっている。意味は分かる。だが、その意図が分からなかった。 まだピサロには余力があった。殺す必要は無かった。なのに、何故このタイミングでニノを殺すのか。 今ニノを殺せば“どうなるか”など、分かりきっているというのに。 ジャファルの体が、撥ねるようにニノへと駆けていった。当然だ、これでも遅いくらいだ。 そう、分からないのはそれだけではない。“何故ジャファルは、気付かなかった?”。 ジャファルのことだ、他の連中にとっても今ニノを殺すことにメリットが無いということが無いと分かっていても、 その視線は常にニノのことを懸念していた。ニノを殺そうと思うだけで、ジャファルはそれを察知し、ニノを守りにいくだろう。 (いや、というか、今、いつ刺した!? 殺気なんて無かったぞ) 何より、ピサロからはまったくといっていいほど殺気を感じなかった。殺すという意思が、完全に欠落している。 計画も無い、殺意も無い殺害――――そんなものが、あっていいのだろうか。いや、それよりもまず、ニノを助けないと―――― 「く、ニノ……!」 「“お手つきだぜ、ヒヨコの王様”」 ニノの方へ体を向けようとしたヘクトルの耳に、死神の羽音が侵入する。 これは、誰にも予想できなかった状況。誰もが望んでいなかった状況。それに、ヘクトルもジャファルにも対応できなかった。 故に、この場で一番速く動けたのは―――――――この状況を“覚悟”していたギャンブラーだけだ。 「ンGOOOOOOOOLDEEEEEENNNNNNッッッ!!!!!!」 ヘクトルが死神の方を向く。羽音だと思っていた鎌の音は、秒間千回転以上の唸りを上げる回転のこぎりだった。 食い込めば肉はおろか背骨まで輪切りになるだろうそれが、ヘクトルの眼前にあった。 「う、うぉおあおッ!!」 思考に気をとられていた矢先に、この凶器を前にしては、ヘクトルも慌てざるを得なかった。 とっさにかち合わせたアルマーズがのこぎりを破壊するが、のこぎりの回転とかみ合い吹き飛ばされ、ヘクトルの体が大きく仰け反ってしまった。 「安い。安いな、ヘクトル。そう簡単に手札をポロポロ落とすもんじゃねえよ、丸見えだぜ? お前の考えていることがな」 「セッツァー、手前、まさか――――――」 強烈に瞼を見開くセッツァーの瞳の奥に、ヘクトルは最悪の予感を想起する。 「『ジャファルを切るつもりか!?』ってところだろ、お前が言いたいのは? “それは、この後次第さ”」 だが、セッツァーはそれを見越した上であざ笑い、その手元に2枚のカードを握る。 回転のこぎりはフェイク。ヘクトルに生まれた『虚』を更に揺さぶり、大きくこじ開けるための演出道具。 そして、アルマーズを手放し、上体を崩したヘクトルに本命の2射が放たれる。 「ジャファルから聞いたよ、ヘクトル。あんた国を作りたいんだってな? その夢も悪かねえぜ。 だが、それをなすにゃちっとばかし『ユーモア』が足りなかったな。あの、のこぎりを持っていた王様のような、余裕がな。 まあ、なんだ。お前は国を建てるより地べたで斧を振って国を耕してる方が似合ってるよ」 死神のカード、そのひとつがヘクトルの左手首へ突き刺さる。両手で斧を持つときに必須な、左の手首に傷がつく。 そして、もう一つが、ヘクトルの左目に近づいてきた。 ヘクトルには、訳が分からなかった。このギャンブラーはいったい何なんだ。どうして、こんな滅茶苦茶な状況で笑えるのか。 「ぐぁ……!!」 「ま、もっとも―――――お前は、ここまでだがな」 それを理解できるのが『ユーモアのある王』だというのなら、そいつはきっと碌でもない野郎なのだろうな、 と、世界の半分が途絶える中でヘクトルはバランスを崩し倒れた。残る右目に、青空に浮かぶ幸薄い少女を見ながら。 善し。ヘクトルが倒れる中で、セッツァーはやっと一息をついた。 ピサロが動いてから、一呼吸もしていなかったのだ。それほどまでに、この状況は“張り詰めていた”。 当然、セッツァーもこの事態を覚悟はすれど、このタイミングで起こされるとは思ってもいなかった。 理屈でもない。殺意でもない。ピサロの考えは本人に問い詰めない限り、察しようも無い。 ならば今できることは、この後ジャファルがどう動こうがどのような状況になっても支えられるように、この隙を最大限に利用することだった。 回転のこぎりを使い潰し、ヘクトルの片手と片目を潰した。ここまでは善し、後は――――― 「セッツァーァァァァァ!!! 手前ェェェッッ!!!!」 侍を纏った物真似師が、勇者の剣と共に突っ込んでくる。当然だ、今から行って間に合わない小娘よりも、今間に合うヘクトルを守りに来るだろう。 フードに覆われてもはっきりと分かる殺意。手札を全部さらしているようなものだ。だから、この『2枚目のコイン』が役に立つ。 「おぅ、物真似師。そういえばまだ礼を言っていなかったな。ありがとうよ、アシュレーを殺してくれて! おかげで手間が省けたぜ!」 「グッ、ガ……セッツァーの……船長の口で、その名を嘲るなアァァァァァッ!!!!」 ゴゴが胸を押さえながら、感情を滾らせて剣を振りかぶる。まったく、猪か何かか。考えうる限りの挑発で、相手の心を逆撫でする。 十分と見て取ったセッツァーはやれやれといった様子でサックに手を伸ばす。手が震えないようにだけ、神経を張り巡らせながら。 (さて、賭けの時間だ―――――――――これで、止まってくれよ!!) 「いや、何か遺品の一つも渡してやりたかったんだが、顔もぐちゃぐちゃになっててな! ひどいことをするやつもいるもんさ。だからよ――――」 「右腕一本くらいは、覚悟しやがれ! 桜花ッ!!」 「これで、許してくれねえか? 未だ動いてるぜ?――――――――『こいつの心臓』ッ!!」 瞬間、ゴゴの世界が凍りついた。内側より沸き出でようともがく衝動も、優しき物真似達も、何もかもが。 直後、内側からこみ上げて器を壊さんと足掻く無念を押しとどめながら、ゴゴはセッツァーの手のひらを見た。 セッツァーの手のひらをすっぽり覆い、諾々と存在しない血を流し続ける英雄の心臓が。ゴゴの砕いた残骸が。 「お、お前、それを……ッ!!」 「ふん……蓋を開けてみればやっぱり三下か。あれだけ酷い死体の癖に心臓だけ妙に綺麗に残ってるから拾ってみたが――いや、拾い物はするものだな。 で、いいのか物真似野郎。お前の相手は、俺じゃなかったはずだぜ?」 セッツァーの声にゴゴははたと気付き、右手を背中に向けると、魔王のランドルフとゴゴの右手が激突する。 内側の衝動を抑えながらの行動としては、最上の防御であっただろう。だが、対応としては最低だった。 「ほう、貴様……中に面白そうな物を飼っているな。なるほど、カエルの言っていたのがお前か……面白い」 ゴゴの苦悶の表情にそれ以外の何かを見出した魔王が、興味深そうに言った。 「ならば、まずはその邪魔な右腕<扉>―――――――開錠させて貰おうか」 そしてランドルフが光を放ち、光は中空で分かたれ、再び魔鍵へと収束する。 「七星鍵にて開け、電界25次元」 「その技は――――――」 ゴゴの予感は的中する。 魔の鍵に防御など無意味。腕だろうが、多次元だろうが、差し込んで開く。それが魔鍵ランドルフ。 「「超次元穿刀爆砕」」 ゴゴが右手ごと大きく吹き飛ぶ。 多元を超えて集められたエネルギーが、ゴゴの右腕の内側に放出される。 つながってはいるが、もはや右腕は使えないだろう。だが、腕を失ったことよりもセッツァーの行いが悔しかった。 もう、分かり合うことなど出来ないのだろうか。やつにとって俺はただの盗人でしかないのか。 その現実を認めたくなくて、吹き飛びながらゴゴは空を見上げた。よく晴れた青空に、黒き祈りが立ち上っていた。 「礼を言う、ニノ。貴様は、私が何よりも欲していたものを伝えてくれた」 ピサロの声が、次第に遠くなっていく。意識ははっきりしているはずなのに、あたしはそれを聞くことしか出来なかった。 「装填・ラリホーマ。私からの、せめてもの礼だ。痛みは無い。終わりまで全て、夢の中だ」 ぐい、と体が持ち上げられるのがわかる。でも、痛みは無い。ピサロ以外の誰かの声がする。 「ありがとう、人間の少女よ。私は誓おう。“かなう事ならば、お前とマリアベルとやらも蘇らせよう”」 何を、何を言っているんだろう。よく分からない。だけど、それが本当に心の底からあたしを想ってくれている音だと分かって、あたしは少し安心した。 「“独法師は寂しかろう”。今は、ロザリーと共に遊ぶがいい。蘇らせるまでのしばしの間とはいえ、ロザリーも寂しがらずに済むだろう」 ロザリーさんに会える。マリアベルに会える。それは、酷く素敵なことのように聞こえた。 眠くなっていく。あたしの体から力が抜け、空を飛ぶような感覚に包まれる。呼び声が聞こえる。あたしを呼ぶ声がする。 「細密充填――――――人間<セッツァー>曰く、これは、この武器を使っていた英雄の技の名らしい。 案ずるな、娘。勇者のそれとは比べるもおこがましいだろうが――――路は、この一撃が導こう」 あたしの遥か下で、何かがバチバチと鳴っている。それは昨日の夜何処かで聞いたような音だった。 その中に叫び声がする。ニノ、にのと、呼ぶ声がする。 あたしは、その声の先へ手を伸ばした。頭は朦朧として、目はうまく見えない。でも、なぜかその手の大きさが分かる気がした。 「ゃ、ふぁ」 「来たれ、黄泉の雷」 安心できるはずなのに、怖いものはないはずなのに。 なぜだろう。眠る前に、その手だけは、掴まなきゃって、想ったんだ。 「じゃ、ふぁる」 「―――――――――フルフラット・ジゴスパーク」 「ニノォォォォォォォォッォォォォォォォォォォォォォオヲオッォオォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 かつて勇者の雷が降りた地より、地獄の雷の一閃が撃鉄の如く立ち昇る。 空より赤く大きな陽が見守る中、地より紅く大きな火が見定める中―――――――― 世界最期の日は、こうして始まった。 【C-7とD-7の境界(C-7側)二日目 朝】 【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態] 健康 慟哭 [装備] 影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、黒装束@アークザラッドⅡ、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ [道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6 マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、基本支給品一式×1 メイメイさんの支給品(仮名)×1 [思考] 基本 殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。 1:にの? [備考] ※ニノ支援A時点から参戦 ※セッツァーと情報交換をしました ※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】 メイメイさんのルーレットダーツ2等賞。メイメイさんが見つくろった『ジャファルにとって役に立つ物』。 あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがジャファルが役に立つと思う物とは限らない。 【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】 [状態]:好調、魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り [装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2 [道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪 天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3 小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@??? ウィンチェスターの心臓@RPGロワ [思考] 基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る 1:ジャファルの反応を見極め、対応 2:魔王、ピサロ(可能ならばジャファルも)と連携し、ヘクトル・ゴゴを倒す 3:C7制圧後は南下し、残る参加者を倒す 4:ゴゴに警戒。 5:手段を問わず、参加者を減らしたい ※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です ※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。 ※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。 【日記のようなもの@???】 メイメイさんのルーレットダーツ1等賞のイカサマのダイスを放棄してセッツァ―が手にした『俺にとって役に立つ物』。 メイメイさんの店にあった、場違いな書物。装丁から日記と思われる。 専用の『鍵』がないと開かないらしい。著者名は『Irving Vold Valeria』。 ※回転のこぎりは破壊されました 【ピサロ@ドラゴンクエストIV】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、心を落ち着かせたため魔力微回復、ミナデインの光に激しい怒り ニノへの感謝 ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません) [装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2 [道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実 点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、 バヨネット 天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ メイメイさんの支給品(仮名)×1 [思考] 基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる 1:ニノ……ロザリーを頼んだぞ…… 2:セッツァー・ジャファル・魔王と一時的に協力し、ヘクトル・ゴゴを撃破しつつ南へ進撃する 3:可能であれば、マリアベルとニノも蘇らせる [参戦時期]:5章最終決戦直後 [備考]:確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。 ヴォルテック、クイック、ゼーバー(ニノ所持)、ハイ・ヴォルテック(ニノ所持)。 ※バヨネット(パラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます) 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】 メイメイさんのルーレットダーツ3等賞。メイメイさんが見つくろった『ピサロにとって役に立つ物』。 あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがピサロが役に立つと思う物とは限らない。 【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中) 左手首に傷 左目消失 [装備]:アルマーズ@FE烈火の剣 [道具]:ビー玉@サモンナイト3、 基本支給品一式×4 [思考] 基本:オディオを絶対ぶっ倒して、オスティアに戻り弱さや脆さを抱えた人間も安心して過ごせる国にする 1:ニノォォォォォォォ!!!!! 2:ジャファルは絶対止めてニノと幸せにさせたいが… 3:つるっぱげ、ダブル銀髪を必ず倒す。 4:ゴゴとちょこから話を聞きたい。 5:アナスタシアとセッツァーを警戒。 [備考]: ※フロリーナとは恋仲です。 ※セッツァーを黒と断定しました。 【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、首輪解除、アガートラーム 右腕損傷(大)感情半暴走 [装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE 、ジャンプシューズ@WA2 [道具]:基本支給品一式×2(ランタンはひとつ) [思考] 基本:物真似師として“救われぬ”者を“救う”というものまねをなす 1:ヘクトル達を助け、セッツァー達を倒す。 2:セッツァー…俺は…!! [参戦時期]:本編クリア後 [備考] ※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。 ※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。 ※セッツァーが自分と同じ時間軸から参戦していると思っています。 ※内的宇宙に突き刺さったアガートラームで物真似によるオディオの憎悪を抑えています 尚、ゴゴ単体でアガートラームが抜けるかは不明です 【魔王@クロノ・トリガー】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(中) [装備]:魔鍵ランドルフ@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノ・トリガー [道具]:不明支給品0~1個、基本支給品一式 [思考] 基本:優勝して、姉に会う 1:セッツァー、ピサロと連携してゴゴ・ヘクトルを倒す 2:ジャファルについては興味がない 3:ヘクトル・ゴゴを倒した後、カエルの援護に向かう 4:カエルと組んで全参加者の殺害。最後にカエルと決着をつける。 [参戦時期]:クリア後 [備考] ※ラヴォスに吸収された魔力をヘルガイザーやバリアチェンジが使える位には回復しています。 ※ブラックホールがオディオに封じられていること、その理由の時のたまご理論を知りました。 ※遺跡の最深部、危険なのはその更に地中であるということに気付きました。 ※ランドルフの解析が進み、『ゲートオブイゾルデ』と『超次元穿刀爆砕』が使用可能になりました。 【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:■■■■■■■■■■■■■■■■ [装備]:表示できません [道具]:表示できません [思考] 基本:――な―――っしょ―――――――― 1:言語化できません [備考]: ※いまさら、何を備えるというのか、何を考えるというのか 時系列順で読む BACK△136-1 世界最期の陽(前編)Next▼137 クロスファイア・シークエンス 投下順で読む BACK△136-1 世界最期の陽(前編)Next▼137 クロスファイア・シークエンス 136-1 世界最期の陽(前編) ゴゴ 137 クロスファイア・シークエンス カエル 魔王 ニノ 138 ある『暗殺者』の終わり ヘクトル セッツァー ピサロ ジャファル ▲
https://w.atwiki.jp/h_session/pages/6854.html
キャラクター ブラッド パーソナリティ アビリティ ハイパーアーツ アーツ 武具/アイテム 設定 セッション履歴 [部分編集] キャラクター 人の名:アナスタシア・ミハエロヴナ 魔の名: 年齢 :18歳 性別 :女 ブラッド プライマリ マジシャン セカンダリ イレギュラー カヴァー 聖職者 FP 19 人間性 15 行動値 9 守護者FP 18 守護者行動 7 パーソナリティ 出自 神の恩恵/美形 変異 光を纏う 絆 世界:救済 エゴ ブラックコート:崇拝 経験点 | /9 [部分編集] アビリティ 自分 | 能力基本値 / 修正値 | 技能 | | | | 体力 7 / 2 | 白兵 | 耐性 | -- | | 敏捷 9 / 2 | 射撃 | 運動 1 | 運転 | | 感情 12 / 4 | 意思 2 | 魔力 2 | -- | | 知性 12 / 4 | 知識 2 | 機械操作 1 | 知覚 | | 社会 9 / 3 | 交渉 1 | 情報(魔物) 1 | -- | 守護者(大天使ラファエル) | 能力基本値 / 修正値 | 技能 | | | | 体力 8 / 2 | 白兵 | 耐性 | -- | | 敏捷 6 / 2 | 射撃 | 運動 1 | 運転 | | 感情 10 / 3 | 意思 1 | 魔力 2 | -- | | 知性 8 / 2 | 知識 | 機械操作 | 知覚 | | 社会 12 / 4 | 交渉 2 | 情報() | -- | [部分編集] ハイパーアーツ | 名称 | 宣言 | AGP | 効果 | | 歩く影法師 | いつでも | コピーした物と同じ | シナリオ中に使用されたHAを1つコピーする | | リセット | いつでも | 任意 | [消費AGP]体のキャラクターの[仮初めの死][真の死]を回復、FP1にする | | ヴォイド | HA使用時 | 消費AGP+1 | 使用されたHAを打ち消す。 | アーツ 共通 | 名称 | タイミング | Lv | 判定 | コスト | 時間 | 射程 | 対象 | 効果 | | 人の心 | 常時 | 1 | - | - | - | - | 自身 | [人間性]最大値+[Lv×2] | 人の心 マジシャン | 名称 | タイミング | Lv | 判定 | コスト | 時間 | 射程 | 対象 | 効果 | | 呪文 | マイナー | なし | 自動 | 3 | メイン | - | 自身 | マジシャンのアーツによる判定のクリティカル値-1 | | 偉大なる叡智 | メジャー | 1 | 知識 | 3 | メイン | - | 自身 | [情報収集]を 知識 で代用し、達成値+[Lv+2] | | 魔法相殺 | リアクション | なし | 魔力 | 4 | メイン | - | 自身 | [特殊攻撃]を<魔力>で防御判定できる。1ラウンド1回 | | ファミリア | 常時 | なし | - | - | - | - | 自身 | マジシャンのアーツコスト-1 | | 幸運 | セットアップ | なし | 自動 | 6 | 効果参照 | シーン | 単体 | 次に行うメジャーアクションのクリティカル値-1。アクションをするかラウンド終了まで持続 | | シャイニングレイ | メジャー | 1 | 魔力 | 4 | メイン | シーン | 単体 | [ 光 +3+(Lv×3)]の特殊攻撃。達成値+3 | イレギュラー | 名称 | タイミング | Lv | 判定 | コスト | 時間 | 射程 | 対象 | 効果 | | 混血児:獣の気 | オート | 1 | 自動 | 3 | メイン | - | 自身 | 特殊攻撃のダメージロール前に使用し、ダメージ+[Lv×4] | | 守護者:セレスチャル | メジャー | なし | 自動 | 4 | シーン | 近接 | - | 自分の居るエンゲージに守護者を登場させる | | 第7の感覚 | 常時 | - | なし | - | - | - | 自身 | 魔力判定、クリティカル値-1 | 守護者(セレスチャル) | 名称 | タイミング | Lv | 判定 | コスト | 時間 | 射程 | 対象 | 効果 | | 神格:創造 | メジャー | なし | 自動 | 人間性 | メイン | シーン | 単体 | 対象の人間性を2d6回復し、その分をコストとする | | 加護 | メジャー | なし | 自動 | 3 | 解説 | シーン | 単体 | 対象はダイスを2回振り、好きな方を採用出来る。メジャーアクションするかシーン終了まで持続 | | 曼荼羅 | オート | 1 | 自動 | 3 | メイン | シーン | 単体 | ダメージロール直後、実ダメージを[1d6+(Lv×2)]軽減。1ラウンド1回 | | 神罰 | オート | 1 | 自動 | 7 | メイン | シーン | 単体 | ダメージロール直前に使用し、そのダメージ+10。1ラウンド1回、1シナリオ[Lv]回まで | | パンとワイン | メジャー | なし | 自動 | 4 | メイン | シーン | 単体 | FPを[2d6+【感情】]回復する | | 千年王国 | メジャー | なし | 自動 | 6 | シーン | シーン | シーン | シーン終了まで、全達成値+2、全ダメージ+1d6 | 武具/アイテム | 武器 | 種別 | 隠匿 | 常備化 | 技能 | 命中修正 | 攻撃力 | 装備位置 | | 防具 | 種別 | 隠匿 | 常備化 | 部位 | 回避修正 | 防御力 | | 法衣 | 防具 | 11 | 8 | 胴部 | 0 | 3/2/1 | 一般アイテム ・携帯電話 [部分編集] 設定 ロシアから来た修道女。 癒しと護りの奇跡を成すことが出来るらしい。 身長164㎝、B97(I)W58H94。 金髪で緑の瞳。 実はスラブの神話的人狼クルースニクの末裔である。 [部分編集] セッション履歴 『第一話 Bill or die』(GM如月さん)により、経験点9点獲得 (2011-04-23 02 54 22) コメント
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/396.html
さよならの行方-trinity in the past-◆wqJoVoH16Y 手頃な岩に腰掛けながら、空を見上げる。 疎らな雲は数え始めたらすぐに終わってしまいそうなほどに少なく、 陽光は汗ばんだ額を照りつけていた。 光は誰の下にも等しく降り注ぐ。ただ2人の魔王を除いて。 俺<私>は、今此処に生きている誰よりもその2人をよく知っていた。 ストレイボウは、空を見上げながらぼうっとしていた。 先ほど遠間から遠雷のような戦音が聞こえたが、心にさざ波は立たない。 誰かが鍛錬でもしているのだろう、と断じていた。 読みかけのフォルブレイズの頁が風でパラパラとめくれる。 彼ら戦士の鍛錬と違い、魔術師の準備とはかくも地味なものだ。 奇跡か神の御業と錯覚するほどの絢爛豪華な術法を支えるのは、気が遠くなるほどの下準備。 故に、異界の魔術の最高峰『業火の理』を修める術もまた、その魔導書の読解以外にはない。 火属性魔術の強化触媒にするだけならばともかく、その書を行使するにはその理を解するしかないのだ。 水筒の水で唇を少し湿らせる。腹三分目に留めた空腹感は心地よく、脳漿は澄み渡っていた。 ピサロと分かれたストレイボウもまた、己ができることを模索し始めていた。 既に辿り着く場所を定めた彼は他者に比べその道程も明確で、為すべきこともより具体的となる。 己が立つべきその場所にたどり着くまで、彼らの為したいとする願いを、願えるようにすること――――彼らの力となることである。 己が目指す其処は全ての屍に立って到達するべき場所であってはならない。 その準備として、彼は既にアナスタシアの下に赴き、集められたアイテムの中から必要なものを見繕っていた。 神将器フォルブレイズを筆頭に、天罰の杖とクレストグラフを装備する。 生き残りの中で純正の魔術師はストレイボウしかいないので、 魔術師向けの装備を回収するのに他の者に気兼ねをする必要が無かったのはありがたかった。 攻撃用のクレストグラフが無いことは気づいたが、 ほぼ全ての属性に心得を持つストレイボウには不要であったため、さほど気にはしていない。 むしろ、補助魔法の手管が増えることが、彼にとっては好ましく思えた。 たった一人に勝つ為だけに磨き抜いたこの術理が、誰かの力になれるということが嬉しかった。 装備を改めるに当たり、ストレイボウはアナスタシアへの了解を取らなかった。 正確には、了解を得ることが出来なかった。 工具を手に首輪の向かい合いながら佇むアナスタシアを目の当たりにして、声をかけることなど出来なかったのだ。 ルシエドに背中を預け、邪魔にならぬよう髪をまとめ、顎の縁から”つう”と汗を滴らせる彼女に、常の道化めいた気配は微塵もなかった。 視線で首輪に穴をあけてしまいかねないほどの集中を以て、彼女は首輪に相対している。 アナスタシアは首輪に触れることもなくただ首輪を見つめていた。 その様だけを見れば、時間もないのに何を悠長にと思う者もいたかもしれないが、ことストレイボウに限っては違った。 彼<私>には理解できる。彼女は取り戻そうとしていたのだ。 遙か昔に置いてきた指の記憶を、技術者<アーティスト>としてのアナスタシアを。 寝そべったまま、ストレイボウはフォルブレイズの横に置いたもう一つの書をみる。 そこにあった手帳のような1冊の書。それこそはマリアベルの遺した土産に他ならない。 気づいていなかったのか、気づいて捨て置いたのか、なんにせよストレイボウはアナスタシアに咎められることなくそれを手にした。 その内容は絶句としかいいようもないものだった。 (無論、序文の傾いたケレン味あふれる文章に、ではない) 真の賢者というものがいるのならば、それあマリアベル=アーミティッジをおいて他にはいないだろう。 その真なる序文をざっと読むだけで、アナスタシアの放送後の行動は納得できる。 彼女の周りには、無数のメモの切れ端があった。 マリアベルが遺した首輪の解除方法の記されたメモだった。 イスラやアキラ、果てはニノやヘクトルのサックにも分散して入っていた様子。 アナスタシアがサックや支給品を一カ所に集めさせたのもこれが理由なのだろう。 そして、そのメモを横目に見た彼<私>は確信する。これでほぼ正解だ。 この通りに分解できれば、少なくとも首輪は無力化できると“今の”ストレイボウは理解できる。 故に、アナスタシアに求められているのはそれを寸分違わず実行できる精度。 だから彼女は取り戻そうとしている。未来に向かうために、記憶の遺跡に預けた過去を。 それはさながら、小さな鑿一つでただの石材から精細な石像を作り上げるようなものだ。 図面も手本もない。あるのは忘却にまみれ、錆びついた指の記憶のみ。 それを以て、錆を少しずつ払い、恐る恐る削りながら、 かつての、聖女になる前のアナスタシア=ルン=ヴァレリアを形成していく。 やり直しなど出来ない。作りだそうとしているのが自分自身の過去である以上、 誤謬があったとしてもその真贋を裁定することはできない。 脳は、平気で嘘をつく。記憶に曖昧なところがあれば、一時の納得のために簡単に適当な想像で欠落を埋めようとする。 だからアナスタシアは、慎重に慎重に、薄氷を踏むように遺跡に潜っている。 嘘などつかぬように、真実だけを求めて、記憶に向かい合っている。 だから、ストレイボウ<私>は何も言わずその場を去った。 理解できるから、何も言わない。これは彼女にしか出来ない戦なのだ。 指の精度は技術者にとって命運を分かつものなのだと知っているが故に。 ストレイボウは、空に翳した自分の指を見つめてため息をついた。 オルステッドや、ヘクトル達ほど太くはない指は、それでもアナスタシアに比べれば大きい。性別の差だった。 (悪いな。俺じゃ、首輪の解体はできない。歯痒いだろうが、許してくれ) 指を見つめながら、此処にはいない誰かに、記憶<ココ>にいる彼女に、謝罪した。 ストレイボウがいずれ来る時に向けて備えていたのは、3つの書物を読み明かすこと。 業火の理、マリアベルの遺言、そして――“彼女の記憶”を。 瞼を閉じて、己の内側へと深く深く沈んでいく。肺から空気が抜けきったあたりで、瞼の内側の色が変わる。 自分の知らない風景の光、自分の出会ったことのない人の音、自分が触れることのなかった命。 やがて、その色彩は収束し、自分の知る世界へとたどり着く。 ストレイボウが看取ったその残響を名を、ルッカ=アシュティアと言った。 戦いの中では生き延びることに無我夢中で、その事実の意味に気づく暇もなかったが、 この凪いだ空の下で一呼吸を置けば、改めて自分の中にルッカ=アシュティアの記憶があることを認識できる。 原理は理解できないが、その事実を認められないほどストレイボウは青くはない。 おそらくはあの石――考え得るルッカとの唯一の接点――が、もたらしたものなのだろう、と予測していた。 未経験の記憶が自身に混入するという異常事態を前にしても、ストレイボウは平然――とまではいかなくとも受け入れている。 “封印した記憶を統合する”ならばともかく“まったく新しい記憶を入れる”のならば、その負荷は尋常ではない。 二十年しか生きていない精神<コップ>には、二十年分の記憶<水>しか注げないのだ。 無理に注げば、本来入っていたはずの水が零れてしまう。 だが彼の魂魄は、死してなお心の迷宮で滅んだルクレチアを眺め続けてきた。 気が遠くなるほどに、永遠とすら錯覚するほどに。罪の意識に狂いかけながら。 彼の心は確かに弱かったが、逆に言えばその弱い心は永遠の時間に晒されながらも壊れなかった。 皮肉にも彼は常命の人間では得られない強靱な精神性を有していた。 その広がったココロ全てを飽和させていた罪の意識が僅かでも改まった今ならば、 二十年にも満たない少女の記憶は広大な図書館の書架に納められた一冊の新しい古書にすぎない。 ストレイボウは見るものから見れば異常とも言える自心の剛性を自覚することなく、ルッカという名の古い本を読んでいく。 虫食いもあり、水に濡れて頁が合わさってしまっている場所もある。下手な観測は対象を歪めてしまう。 それでもアナスタシアのように慎重に慎重を重ね、ストレイボウはこの島でのルッカ=アシュティアの記憶までは読み終わっていた。 ルッカ=アシュティアがどのような人物だったかは、カエルに聞いてその触りは掴んでいる。 その際、ストレイボウは彼女の記憶についてカエルに伝えなかった。 聞かれたカエルは多少訝しんでいたが、どうやらアナスタシアとのけじめをつける覚悟を決めたあとだったらしく、深く追求はされなかった。 もっとも、その事実を告げたとしても、ストレイボウはルッカ=アシュティアではない。 魂の欠片があるわけでもない、記憶に付随する生の感情があるわけでもない、 纏う骨と肉の大きさも違うから工具を扱う経験も再現できない。 本当にただの記録。ストレイボウが持っているのはそれだけでしかないのだ。 マリアベルを殺めた罪をアナスタシアが許すことができたとしても、 ルッカを殺めたカエルの罪を赦す資格は己にはないのだ。 (だからこそ、彼女の記憶を無駄にするわけにはいかない) ストレイボウは背を起こし、対面の岩に壁掛けた2つのアイテムをみる。 ゲートホルダーと、ドッペル君。この島に喚ばれる前の彼女の記憶を喚起する触媒として持ってきたものだった。 それを見つめれば、完璧にとは言わないまでも、朧気に彼女の歩んだ冒険の軌跡が浮かぶ。 このゲートホルダーは、きっと彼女の冒険の中心にあったのだろう。 そして、この人間そのものとしか思えない人形に、ストレイボウは思う。 クロノ。彼女の冒険の記憶には、常にこの少年がいた。どの時代にも彼がいた。 きっと、彼は、彼女の中心に限りなく近い場所にあったのだろう。 三人の誰が欠けても始まらなかった。彼と、もう一人の王女と、彼女がこそが……きっと時を越えて星を救う冒険の核だったのだ。 (まるで、俺たちと同じ…………いや、邪推か) 彼女の立ち位置に自分を観るなど、彼女に失礼だ。 不意に生じた妄想を振り払い、クロノとゲートホルダーを符丁として彼女の冒険を読み進める。 海底神殿、死の山、太陽石に虹色の貝殻、そして黒の夢。 冒険の終わり、その果てに――『大いなる火<ラヴォス>』はいた。 (ラヴォス……星を喰らうもの……そんな化け物までも、お前は敗者として喚んだというのか、オルステッド) 国一つを滅ぼしたストレイボウとは言え、星というスケールには流石に面を食らう。 だが、いつまでも惚けている暇はなかった。 マリアベルの警告に拠れば、ラヴォスがこの島の中枢に組み込まれている可能性が高いのだ。 カエルがあの雷の刹那に識った事実も、それを補強している。 (戦力として使う……違うな、そんなモノ使わなきゃいけないほど、お前は弱くない。やっぱり、省みさせる為か) オディオはーー否、オルステッドは完璧だ。力が足りないだとか、 力を欲するという発想から一番遠い場所にいる彼が戦力を喚ぶとは考えられない。 全ては、墓碑に銘を刻むために。 誰もが自分が立つ場所を省みるようにと、祈りを込めて地下墓地を創ったのだ。 (今、それを考えても仕方ない。全てはあいつの前に立ってからだ。だが――) オルステッドの行為の是非について巡り掛けた想いを、ストレイボウは頭を振って押さえ込む。 それ、に関して論じてはならない。その始まりを作ったのは、他ならぬ自分自身なのだから。 だからこそ、ストレイボウは考えるべきことを考える。 オルステッドにラヴォスの力を得ようとする思惑はないだろう。 だが、彼はどうだろうか。 「…………分かっているのか、ジョウイ。お前が何を手にしようとしているのか」 ジョウイ=ブライト。あの混戦の中で、カエルの持つ紅の暴君を奪い去った少年。 彼はカエルと魔王が潜伏していた遺跡にいるのだろう。 あの遺跡に巨大な力が眠っていることは、雨夜の時点でカエルが告げていた。 恐らくは、そこに行くまで含めて彼の絵図だったのだ。そう思わずには居られないほど、あの逃散は鮮やかすぎた。 10人近い戦力を前に敵対し生きて逃亡できるほどの魔剣の力では飽きたらず、遺跡に眠る力を手に入れようとしているのだろう。 だが、恐らくはジョウイはその力が何であるかを知らないはずだ。 ルッカがジョウイにラヴォスの情報を伝えていない以上、彼がラヴォスについて知る手段はほぼないのだから。 星に寄生し、根を張り、あらゆる生命・技術を吸収し、進化する鉱物生命体。 確かにその力は絶大だ。だが、赤い石に魅せられたものがどうなるかを、ストレイボウ<ルッカ>は古代で知っている。 アレは与えるものではない。奪うものだ。一度魅せられれば、何もかもを奪い尽くされ、下僕とされてしまうだろう。 「そんな力で、理想を形にするというのか」 対峙した時、魔剣で変貌したジョウイは己が目的を告げた。 ストレイボウの憎悪で揺るがない理想の国を、憎しみのない楽園を創るため、オディオを継承する。 そこに一切の虚言は無い。本当に、本気で、それを創るために、彼は力を求めている。 そしてその赤い石と紅い剣の力で、俺たちを討つ心算だ。 人の身に過ぎた力を得たジョウイには時間がない。 ピサロの見立てでは、日没まで。必ず、それまでに彼は動かざるを得ないのだ。 (ならば、俺たちがするべきは……) 1.首輪を外し、日没まで耐え切る。 2.首輪を外し、遺跡に向かいジョウイを倒す。 3.首輪を外し、ジョウイを無視してオディオを探す。 ストレイボウは持ち前の論理性で、自分達が取り得る行動を3つにまで絞り込む。 枝葉末節はさらに分派するだろうが、大凡この3つだ。 1は文字通りジョウイの自滅を待つというもの。 現在ストレイボウたちは禁止エリアによって包囲されているが、アナスタシアが首輪を解除出来ればその囲みはなくなる。 いくらジョウイが正体不明な力を持とうが、6人が連動的に動ければ逃げ切りは不可能でもないはずだ。 ジョウイが持て余した力に潰されてから、ゆっくりオディオの居場所を探せばいい。 それに、ジョウイも決して殺人快楽者ではない。殺しきれないと悟れば、無駄を避けて協力する目もあるはずだ。 懸念があるとすれば、ジョウイが復活させる力が自律型――たとえばモンスターのような――であった場合、 ジョウイが死しても動き続ける可能性くらいか。それでも、ジョウイがいなくなれば対処の仕様もあるだろう。 2は先手を取ってジョウイを討つというもの。 ジョウイの懐に飛び込む格好になるが、引き替えにラヴォスの復活を阻止できる可能性がある。 魔王をしてオディオ以上やもと警戒するほどの力、それを復活させることは愉快な状況ではない。 万に一つ――ラヴォスをオルステッドが“終わった後に使う”可能性を考えれば、 ジョウイが罠を張って迎え撃ってくる危険性を差し引いても釣りがくる。 3は、完全な電撃戦。ジョウイもラヴォスも無視してオディオに対面し、この催しそのものを終わらせてしまうこと。 最悪、ジョウイとオディオを二正面で相手にすることになりかねないが――決着は最も早いはずだ。 「尤も、肝心要のアイツの居場所が分からんことには、画餅に過ぎないか」 苦笑を浮かべながらストレイボウは仰向けになった。 詰まるところ、気が急いているのはイスラ達だけではなかったということだろう。 何を話せばいいのかも定まっていない癖に、向かい合いたいという気持ちだけが鞘走っている。 無理もない、と溜息を吐く。 友として、恋敵として、仲間として、宿敵として、罪人として、 生まれ、死に、そして今に至るまでの道の向こうには常にオルステッドがいた。 どれだけ近づいても届かないと思ったその背中。 その背中に、今までにないほど近づいているという確信がある。 俺は、どうすればいいのだろうか。 アイツと向かい合い、その先にあるものをどうしたいのだろうか。 近づく約束の時に向けて、俺は目を閉じ、話したいと思う相手を思い浮かべた。 ――――・――――・――――・――――・――――・―――― [アナスタシア] ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 『カエル』 《グレン》 話し相手を △ 選んでください 「???」 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ▽ [アキラ] 「ピサロ」 [ストレイボウ] ――――・――――・――――・――――・――――・―――― 「――――そうだな。まだ、お前の話を聞いちゃいない」 自分自身を省みるようにして、ストレイボウが思い浮かべたのは、一人の少年だった。 ジョウイ。 何が彼を其処まで駆り立てているのか、ストレイボウには見当がつかない。 ただ、皮肉にもルッカの記憶には、ジョウイを知るものが多くいた。 リオウ、ナナミ、ビッキー、そして最後に魔王との闘いに闖入してきたビクトール。 純粋に出会ったと言うだけならばルカ=ブライトも。 話をする時間などほとんどなく擦れ違いのようなものばかりだったが、ルッカはジョウイに所縁ある全ての人物に出会っていた。 誰一人として、ジョウイを警戒していたものはいなかった。 ルカ=ブライトを警戒こそすれ、ジョウイを敵だと思っていた者はいなかったはずだ。 一体、ジョウイ=ブライトというのは“何”なのか。 ビクトールという男がジョウイとルッカを逃がしたということは、少なくとも信ずるべき何かはあったということか。 (そういえば辛うじてルッカとまともに会話できたビッキーだけは、言葉を濁していたな) ふと、ルッカの記憶を眺めながらストレイボウは思った。 ルッカに自身の知る者を説明するとき、リオウとナナミとビクトールの情報量は多いのに、ルカとジョウイの情報量が極端に少なかった。 知らなかったのか、あるいは“語りたくなかった”のか。 何にせよ、はっきりしていることが1つ。 ルッカの記憶を継承したストレイボウは、この場の誰よりも残る2人の敵対者に縁深い者になっていた。 なにより、あのカエルとの決着の時、怯んだ自分の背中を押しとどめてくれたのは、他でもないジョウイだった。 たとえそれが紅の暴君を手に入れるための演技だったとしても、あの血塗れの叫びが嘘だとはストレイボウには想えない。 「一方的に吐かれた言葉で、何が分かる。一方的に聞いた言葉で、何が伝わる。 俺はまだ、オルステッドとも、お前とも会話しちゃいない」 ストレイボウの望みは、彼らにしたいようにあってほしいということ。 そしてそれは、ジョウイさえも例外ではない。 一方の視点にだけ立って全てを断じてはならない。 真の決断とはそんな安易なものではない。 ジョウイの願い。それを理解せずして、決断も何もない。 だから、願った。距離も、禁止エリアも、己を取り巻く状況全てを省みずただ純粋に想った。 ――――果たして、それは奇跡だったのか。 ヴン、と僅かなノイズが耳を穿ち、ストレイボウは背を起こして目を開く。 其処には、ほんの小さな、本当に小さな『穴』があった。 蒼くどこまでも蒼く渦巻く穴は、次元の底まで届くかと錯覚するほどに深い。 そして、その穴を、ストレイボウ<私>は知っていた。 「ゲート……?」 ゲート、時間と空間を越えて通じる世界の穴。ルッカ達の運命を大きく変えた扉が、そこにあった。 「なんで、いきなりここに……」 目の前の光景に、ストレイボウは驚きを隠せなかった。 ついさっきまで無かったものが、いきなり目の前に現れたのだ。 まるでストレイボウの話を聞いていたかのように。 だが、驚嘆の時間などないとばかりに、ゲートはその形を歪め始めた。 傷口をふさぐようにして、ゲートが収縮していく。 「くっ」 ストレイボウはとっさにゲートホルダーを起動させ、ゲートを励起状態へ引き戻す。 だが、イレギュラーなゲートであるが故か、保持力を越えて収縮をしようとしている。 「くそッ、出力限界解除! おい、皆――――うおぁああああ!!!」 ストレイボウは手慣れた所作でゲートホルダーの力を限界以上に引き出し、ゲートを固定させようとした。 だが、それが逆にゲートを過剰励起……暴走させ、ストレイボウを飲み込もうとする。 「なんで暴走――ん、首輪が3つ光って――4つ……?――ああッ!!」 参考までにと拝領した、アナスタシアが分解し終えた首輪の中の感応石を見て、ストレイボウは気づく。 ゲートを安定させるゲートホルダーではあるが、それには条件がある。 それはゲートに入れるのは『3人』までということ。4人以上で入ればゲートは安定を失いまったく別の場所へ飛ばされてしまう。 感応石、人の意志を伝える石を持っていたストレイボウは、図らずも1人であり4人だった。 「くそ、俺は、こんなところで死ぬわけには……ッ!!」 叫ぶこともままならず、がむしゃらに装備をかき集めながら、ストレイボウはゲートに吸い込まれていく。 行く先は時の最果てか。そうであろうがそうでなかろうが、今はまだ死ねないのだ。 今は、まだ。 長い長い時流に曝されて散り散りになった精神が浮上する。 一瞬とも永遠とも思える時の狭間を抜けたストレイボウの視覚に映ったのは、町だった。 「ここは…………」 整備された石造りの街路、整然と並んだ民家。 「こ、こは…………」 ストレイボウの両脇には、鳥の形をした噴水が水を湛えている。 「こ、こ、は…………ッ!?」 落ち着いたはずの呼吸を再び乱れさせながら、ストレイボウは目を泳がせて正面を向く。 そこに聳えるは、白亜の城。城と呼ぶにふさわしい荘厳な意匠をストレイボウは知っている。 忘れるわけがない。忘れていいはずがない。この手で終わらせた王国の名前を。 「―――――――ルクレチアだとォッ!!」 ルクレチア王国。魂の牢で永劫見続けたあの地獄が、寸分違わぬ姿でそこにあった。 ストレイボウは唾を飲み込み、目を見開く。 錯覚ではない。これは、紛う事なきルクレチアだ。 膝が笑い、歯の鳴る音が止まらない。立つことすらままならず、 ストレイボウは広場の中央で――あの武闘大会の会場だった――尻餅をついてしまう。 無理だった。頭がいくら否定しようとしても、全神経が屈服している。 「な、なんで、あそこに、戻ってきたって」 己の罪そのものを前に、正常な判断など叶うべくはずもなかった。 だが、ほんの僅か、あの島で経たほんの僅かの何かが、ストレイボウに気づかせる。 空がどこまでも黒く、噴水はどこまでも濁り、城壁は骨のように白い。 余韻すらない。ここは、どうしようもなく『死んでいる』のだと。 「いったい、此処は――」 そう言い掛けたストレイボウの口を止めたのは背中を引く妙な感触だった。 マントの裾を引かれたような感触に、ストレイボウが背中を向く。 手だった。小さな、小さな子供の手が、街路から生えていた。 生えた手が、無邪気に、母のスカートを引くようにしてストレイボウを引いている。 「あ、あ――あああああ”あ”ッ!!!」 それにあわてて多々良を踏みながら飛び退き、家の壁にぶつかる。 だが、そこには石の堅さは無かった。抱き留めた腕の柔らかさだけがあった。 「うあ、く、来るな、来るんじゃないッ!!」 理解も納得も超越して、ストレイボウは子供のように腕を振って飛び跳ねる。 鳴り叫ぶ心臓と呼吸にかき乱されながら、ストレイボウは広場の中央に立って周囲を見渡す。 何が家だ、何が町だ、何が城だ。これは肉だ、これは血だ、これは骨だ。 城壁が変化し、身を鎧った兵士になる。町が変生し、人間になる。 ストレイボウは知っていた。覚えてしまっていた。 オルステッドを勇者と讃えた兵士達、オルステッドの出陣を見送った国民達。 オルステッドを捕らえようとした兵士達、ストレイボウに扇動されてオルステッドを魔王と蔑んだ国民達。 彼の憎悪が生み出した全ての結果が此処にあった。 ストレイボウは確信する。 ここはルクレチアですらない。ルクレチアという形に鋳造された死そのものだ。 彼らはストレイボウをじっと見つめ、ゆっくりと歩いてくる。抱き留めるように手を広げながら、何の敵愾心もなく。 当然だ。彼らは真実を知らない。否、真実は死したときに決している。 彼らにとって、彼らを殺したのは魔王オルステッドで、 ストレイボウは魔王に殺された哀れな“同胞”――――共にこの宇宙を構成する細胞なのだ。 だから、何の敵意もなく、何の恨みもなく、ただ同じものであるが故に、ストレイボウを迎え入れる。 あるべき場所へ、我らと同じ場所へ、帰るべき場所へと。 「すまん……すまない……ごめんなさい……ッ!!」 もはや立つこともままならない有様で、ストレイボウは尻餅をついたまま後ずさる。 アレに抱かれたら、取り込まれる。そう分かっていても、ストレイボウは何も出来なかった。 彼らに何が出来る。何も出来はしない。何も出来はしまい。 心をどれだけ改めようが、自分を改めようが、彼らは変わらない。 今ここで全ての真実を暴露しても、彼らに何の意味も付加できない。 自分を変えることはできても、彼らを変えることは出来ない。 自分は今“生きていて”彼らは“死んでいる”からだ。自分は勝者で、彼らは敗者だからだ。 死せるものに、終わってしまったものに、生あるものの手は届かない。故に報いることはできない。 ――――強奪者どもよ。 ――――屍の頂点で命の尊さを謳う滑稽さを自覚せよ ――――なれの果てとなった“想い”を足蹴にして、自身の“想い”を主張するがいい 震え砕けかけた頭で、ストレイボウはオディオの、オルステッドの言葉の真を理解した気がした。 勝者が敗者に出来ることはただ一つ。共に敗者として墓碑に名を刻むこと。 死して共にあることだけだ。 「でも、でも…………た、頼む……」 だが、ストレイボウは震える唇を動かし、辛うじてつぶやく。 「もう少し、待ってくれ…………俺は、俺は…………まだ、まだなんだ……」 死に包囲された中で、このまま墓碑に沈む訳には行かないと、哀願する。 自分はまだ何にも成れていないのだと。このまま其処に戻るわけには行かないのだと。 身の程を知り尽くしてなお、そう懇願した。 死都はその願いなど無視してストレイボウを取り込もうとする。 それはもう本能――否、ただの機構なのだ。生あるものの声で死は変化しない。 それでもストレイボウは叫びながら、死に沈みゆく中で手を伸ばす。 「俺は、まだ、オルステッドに何一つ応えていないんだ……ッ!!」 その時、その手を掴むものがいた。ストレイボウの片手を握る小さな両手の感触を、ストレイボウは感じていた。 「!?」 驚愕と共に、ぐい、と引っ張られ、ストレイボウはルクレチアへと浮上する。 「い、いったい、って、うああ!」 何事かと口にするよりも早く、再び腕を引かれ、ストレイボウの体は南に送られる。 よろよろと足をもつれさせながら、手を引かれたストレイボウは無数の住人が遠くなっていくのを見ていた。 彼らはストレイボウを追おうとはしていない。“してはならないと命令されたように”。 だが、そんなことよりもストレイボウは、手を握った誰かを確認しようと前を向こうとする。 「き、あなたは――」 【サルベージポイント1500mpz――――繋がったッ! 正門から出て下さいッ!!】 そう声をかけようとすると脳裏に直接声が響き、前方の正門が、オルステッドと共に旅立った始まりの門が眩い光を放った。 掴む誰かの姿は影すら映さず、ストレイボウの意識は門の向こう側へと送還される。 残ったのは、その手に伝わった冷たい柔らかさだけだった。 「ぶはぁ!!」 ストレイボウが泥の中から顔を出す。 息も絶え絶えに周囲を見渡せば、そこはルクレチアなどではなく、無限に広がる碧き泥の海だった。 「い、今のは幻か?」 夢でも見ていたのかと一瞬頭をよぎるが、すぐに首を振って否定する。 あの否応のない死の感覚と、手の感触が残っていた。 「K――QPpZQKKQuuuuqZiziGxuZoooppZqqqxuiii!!!!」 それ以上の思考を遮るように、鳴き声のような流動音と共に泥が戦慄く。 異物を検知した、あるいは同胞を捕捉したのか。 どちらにしてもやるべきことは同じと、本能に従って泥に飲み込もうとする。 「ラ、ラヴォス!?」 その形態の多様性に、ストレイボウは無意識にそう叫んでいた。 ラヴォスはその鈍重な外見に反し、あらゆる進化の方向性に適応できるようになっている。 ならば、この無形の泥は、ラヴォスの肉としてこれほどふさわしいものは他にない。 だが、そんな思考はストレイボウの命を長らえさせるのに少なくとも今は何の役に立たない。 触手と化した泥が、ストレイボウめがけて疾走する。 が、突如ストレイボウの眼前を横切った黒い何かが、その泥を阻害する。 「た、盾ッ!?」 「外套<マント>――輝きませんが」 ストレイボウと泥の間に立つはジョウイ=ブライト。 白貌と片目を覆う銀髪――抜剣の証を携えながら、かの男を守るようにして黒き外套を靡かせている。 「呼ばれて刃を押し取り来てみれば……何をしているんですか」 否、比喩ではない。武器も紋章も携えず困り顔をしてみせるジョウイの代わりとばかりに、 その身を鎧った魔王ジャキの外套が泥を弾いているのだ。 「その魔力――魔剣の力を、徹しているのかッ!?」 「抜剣覚醒の余録です。児戯のようなものですが、生まれてすらない子供にはこれで十分」 ただの布であるはずの外套を満たす異常の魔力を感じ取ったストレイボウに応えるように、 外套がストレイボウとジョウイを中心とした周囲を一気に薙払う。 血染めのような外套が、その白き内側へと踏み入らせぬとするように。 泥が形状を喪った瞬間を見抜き、彼の外套はその裾を泥に突き立てる。 そして、その接触を介してジョウイは泥と共界線を接続した。 「――――ッ! ……餓えているんだろう……僕、モ、同ジだ……ッ…… もう少し、もう少し待ってくれ……もうすぐ、“揃う”かラ……」 喉を裂いた穴から漏れるような声で、ジョウイは泥の想いを汲み取る。 脂汗を流し血管を浮き立たせながら、その飢えを、その渇きを、抱きしめるように共有する。 「必ず、あなたを、連れて行く、から……ッッ!!」 その宣誓と共に、泥は力を失ったように海へと形を変えていく。 泥の意志など、想いなど最初から無かったかのように。 想いの果てに凪いだ海で佇む外套の少年のその有様に、ストレイボウは、言いようもない悪寒を覚えた。 時系列順で読む BACK△156 罪なる其の手に口づけをNext▼ 投下順で読む BACK△156 罪なる其の手に口づけをNext▼ 156 罪なる其の手に口づけを カエル [[]] 152 天空の下で -変わりゆくもの- ストレイボウ 151 世界最寂の開戦 ジョウイ ▲